収支計画を立てるために重要なキャッシュフロー計算書
不動産経営は株や投資信託などと違って、買ったら「放ったらかし」ではなく、その物件を経営して利益を上げていかなければいけません。買うときに良い物件を選ぶことも大事ですが、むしろその後の「経営」がそれ以上に大事になってきます。
せっかく良い物件を持っていても、リフォームや入居者募集、管理などの経営全般がまずければ利益が上がらず、ローンが収支を圧迫して、物件を手放したばかりかさらには借金が残る……といったことになったら目も当てられません。
健全経営のためには、しっかりとした収支計画を立てなくてはなりません。でも、いきなり収支計画と言われてもピンと来ないかもしれませんね。要は家計と同じで、いくら収入が見込めて、いくら支出があって、最終的に手元にどれくらいのお金が残っていくのかをしっかり把握するということです。難しく考えることはありません。
その収支計画を立てるために重要なのが、キャッシュフローです。キャッシュフローとは、手元に残る現金の流れやお金の出入りのことです。会社の経営では、損益計算書、貸借対照表のほか、キャッシュフロー計算書が第三の決算書として重要視されています。
「黒字倒産」という言葉を聞いたことはありませんか。企業が損益計算書上では利益が出ていて黒字なのに、キャッシュフローに詰まって倒産するという現象のことです。これは不動産経営にも当てはまり、利益が出ているのにあまりお金が残らず、果てには物件を手放さなくてはいけない……という事態も起こり得ます。
ですから、このキャッシュフローを把握せずに、投資をしたり、経営したりするのは、地図を持たずに知らない町を歩くようなものだと思います。
本当に「正しい」キャッシュフローの計算式とは?
「キャッシュフローなんて、言われなくてもちゃんと計算してるよ」と思われる方も多いでしょう。しかし、私がコンサルタントとしてたくさんの大家さんと接してきた経験上、キャッシュフローの計算式を正確に把握している方がそれほど多くないのも事実です。
「キャッシュフロー」の計算を
①「家賃収入」-「経費」-「ローン返済」
あるいは
②「家賃収入」-「経費」-「返済元金」+「減価償却費」
と考えていませんか? 実はこれこそ、不動産経営で失敗しやすい落とし穴なのです。
ではキャッシュフローの前に、まず「収支」から見てみましょう。企業でいうと、損益計算書(PL)ですね。まずは売り上げがあります。家賃収入、礼金、敷金の償却。次に経費(清掃費、共用部分の電気代、リフォーム代)、支払い金利、減価償却費などですね。
経費を差し引いた所得に対し、所得税と住民税(法人なら法人税)が課税され、残ったのが税引き後利益です。さらに一歩進めて、税引き後利益にローンの返済額や減価償却費を計上して、
つまり、
「税引き後利益」-「返済元金」+「減価償却費」
という計算式に当てはめて、税引き後のキャッシュフローを見ることです。