孫に甘々のおじいちゃん「年間110万円」を15年間贈与し急逝…2年後、まさかの税務調査で「350万円」追徴課税となった恐ろしい理由【税理士が解説】

孫に甘々のおじいちゃん「年間110万円」を15年間贈与し急逝…2年後、まさかの税務調査で「350万円」追徴課税となった恐ろしい理由【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

孫の名義で作った口座へ生前贈与を行っていても、後の税務調査で多額の追加徴税が取られてしまうケースがあると、税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士はいいます。具体的にはどのようなケースでしょうか。本記事では、Aさんの事例とともに贈与の注意点について解説します。

「名義預金」とは?

ここで名義預金について解説をします。名義預金とは「本人が存在を知らない」もしくは「管理をしていない預金」のことを言います。名義だけは孫でも祖父が管理していたら、それは祖父の預金とみなされることになるのです。

 

名義預金とみなされた通帳については、たとえ名義が孫であっても、祖父に相続が発生したら祖父の相続財産とみなされます。名義預金とみなされるケースはいくつかポイントがあります。

 

1.本人が口座の存在を知らない。本人が管理していない。

2.預金残高が本人の所得状況と比べて不自然に多い。

3.口座の届出印が本人ではなく、親の印鑑になっている。

4.口座開設をした金融機関が本人の住所ではなく、祖父母の住所の近くの支店になっている。

5.預金が預けられたままで口座の引き落としがまったくない。

 

これらにあてはまるような通帳であれば、名義預金となりますので、たとえ、毎年110万円ずつ贈与していたつもりでも、贈与をしたことになりません。

 

今回の事例では、祖父は地方に住んでいて、孫は東京に住んでいました。祖父は自分の自宅近くの銀行で口座開設をしていました。子供に言えばよいのですが、遠慮するだろうから黙っておこうという思いやりにより、思ってもいない状況になってしまうことがあります。

 

「名義預金」とみなされないためのポイント

贈与とは、贈与を受ける側も了承を得ていることがポイントになりますので、本人が知らない、了承を得ていないとなれば、その贈与は無効になります。孫のために内緒で貯金を……というケースは多くあると思いますが、このあたりはしっかり押さえて適正な贈与をしましょう。

 

相続税の税務調査はほかの税金と比べて調査になる確率が高く、多くの案件で財産漏れが指摘されています。調査で指摘される財産漏れの多くは、名義預金です。贈与しているつもりにならないように、贈与したいときはしっかり完結させるようにポイントを知ったうえで実行するといいでしょう。

 

一番のポイントは、贈与を受ける本人が管理している通帳であることです。名義預金とみなされないための対策としては、以下の方法が挙げられます。

 

■本人が承諾している証拠として、贈与契約書を作成してそれぞれが管理している印鑑で押印して、それぞれが保管しておく。

■日ごろ使用していない口座や現金ではなく、本人が日頃使用している口座に振り込む形で客観的な記録を残しておく。

■口座開設をするときは受け取る本人が手続きをする。

■110万円を超えるような贈与として贈与税の申告をしておく。

 

お互いの気持ちが台無しになることがないように、贈与の正しい形を知って進めていくことがなにより重要です。

名義預金が税務調査で指摘されるワケ

税務署がどうしてそのような通帳の存在がわかるのか、わからないケースもあるのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。相続人も気づかなかったというケースもよくあります。

 

税務署は本人の承諾がなくても預金口座を調査でき、本人だけでなく、家族の口座も調査対象になることもあります。金融機関は過去10年分の入出金データを保存していることが多いため、税務署は過去まで遡って確認することが可能です。

 

また国税庁や税務署では、納税者情報を管理しており、そこには給与や確定申告のデータが登録されているため、そこに記録されている所得状況と預金の状況を照らし合わせて調査をします。これにより不自然な預金の動きがあれば、一目でわかってしまうのです。

 

相続対策は家族同士ではなかなか話を進めることが難しいことも多くあると思います。しかし、話し合っておけば、贈与税では教育資金の一括贈与など、想いに合わせた制度もあるので、よりよい相続対策をすることができることもあります。

 

家族の大切な想いが苦い思い出になることがないように、大切に思うからこそ、正しい対策を進めていきましょう。

 

 

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー

 

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