(※写真はイメージです/PIXTA)

20世紀に入ると、ロシアでは国民の生活が急激に悪化し、民衆による不満が爆発。2度の革命を経て「ソヴィエト社会主義共和国連邦」が発足しました。ただ、この「ソヴィエト政権」誕生の裏には、ロシアの権力争いに干渉する「ヨーロッパ諸国の思惑」があったと、『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)の著者で河合塾講師の平尾雅規氏はいいます。いま、なにかと話題のロシアの歴史を、平尾氏が解説します。

初の普通選挙では右派の「社会革命党」が勝利

左派のレーニンは議会をむりやり解散…「ボリシェヴィキ独裁」体制へ

同月、憲法制定会議の選挙が行われ、ロシア初の普通選挙で勝利したのは社会革命党でした。国民の8割以上を占める農民を支持基盤としていたため、普通選挙であれば勝つに決まっています。

 

ここでレーニンは、翌年1月に開かれた議会を武力で解散させて、なんとボリシェヴィキによる独裁政治にもっていってしまいました。

 

「共産主義に抵抗する勢力を一掃するまでは非常事態で即断・即決が求められるから、共産党(ボリシェヴィキ)による一党独裁が容認される!」という大義名分ですが、選挙で負けた途端にこの理屈を出すのは、ちょっとあざといですよね…。

 

その是非はともかく、状況としてはフランス革命中のロベスピエールらによるジャコバン派独裁に近いかもしれません。反共勢力との戦いを遂行するために独裁体制を敷くこのシステムは、のちに成立する共産主義国家のスタンダードになっていきます。

 

反共勢力との戦いが激化…“資本主義側と戦うぞ!”→「コミンテルン」が成立

1918年3月にドイツなどとブレスト=リトフスク条約を結び、ロシアはようやく大戦から離脱したものの、反共勢力との戦いはさらに過酷なものに…。この危機に対応して、敏腕なトロツキー赤軍を整備し、また国内では秘密警察であるチェカが反革命分子を取り締まります。

※ 赤色は共産主義のシンボルカラー

 

さらに「こちらからも資本主義側へ反撃だ!」とコミンテルンが成立。世界の共産党の総本部として、各地に物資を送ったりアドバイスをしたり、世界革命を掲げました。 

※ 第3インターナショナル

1922年、「ソヴィエト社会主義共和国連邦」が正式に発足

それでもやはり、ヨーロッパ方面からはイギリスやフランスが、極東からは日本やアメリカがロシアへ侵攻し、ソヴィエト政権は苦境に立たされます。ロシアの国土が戦場になったことで、農地が荒らされ工業生産も低下してしまいました。

 

ここでレーニンは、穀物を強制徴発し、企業を国有化する戦時共産主義を断行。しかし、強制徴発とはつまるところ「タダ働き」ですから、農民のやる気は削がれて農業生産はガタ落ちとなり、大飢饉が発生してしまいました。

※ 大規模な農民反乱も起こった

 

なんとか敵の攻勢を凌ぎ切ると、政府は方針を転換して資本主義的要素を一部容認。「余ったモノは金儲けのために売ってもいいよ」というネップを打ち出し、なんとか生産は回復…。

 

イギリスやフランスはソヴィエト政権の柔軟な姿勢を見て、「あれ? 共産主義者が資本主義を認めてるぞ。レーニンは意外に話せる相手なのかも」と警戒感を緩めました。

 

これが背景となり、1922年にソヴィエト社会主義共和国連邦が正式に発足すると、イギリスやフランスはわずか2年後の1924年にソ連と国交を結ぶことになります※。

※ 当時の英仏が左派政権であったということもある

 

なおソ連成立の直前に、第一次世界大戦後の国際社会で互いに孤立していたソヴィエト政権とドイツが、国交を開いていますよ。

 

 

平尾 雅規

河合塾

世界史科講師

 

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※本連載は、平尾雅規氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる世界史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる世界史

大人の教養 面白いほどわかる世界史

平尾 雅規

KADOKAWA

「なぜ、戦争や紛争が絶えないのか?」「なぜ、国によって考え方・風習・生活が違うのか?」 ……答えは高校時代に習った世界史の授業のなかにあったはずなのに、大人になったいま、その答えがすっぽりと抜け落ちていません…

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