(※写真はイメージです/PIXTA)

人生で起こるさまざまなリスクの経済的損失を補てんする保険。当然ながら保険の加入には出費が伴います。加入を検討する際には、本当に「保険」でお金を残しておく必要があるのか、貯蓄では賄えないのか、しっかりと吟味する必要があるでしょう。本記事では、金融業界25年のキャリアを持つFP田中和紀氏による著書『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)から、保険の考え方について解説します。

保険で遺族にいくらのお金を残す必要があるか

まずは、民間保険に入る意味を考えてみたいと思います。民間保険で有名なものは生命保険で、その中で死亡保険があります。これに加入を考えるときは、遺族にお金を残す必要があるかどうかを検討しなければなりません。

※死亡保険人が亡くなれば遺族に保険金が支払われる保険。

 

お金を残しておくべき遺族とは、どういう遺族でしょう?

 

たとえば、子どもを扶養している場合は、子どもに残すお金が必要です。社会人になるまで生活費や学費が必要になります。扶養している配偶者や高齢の親などもいれば、その生活費も必要となるでしょう。

 

保険でお金を多く残せればよいのですが、そのために保険料の負担が重くなり、今の生活が犠牲になっては意味がありません。身の丈にあった金額で加入するようにしましょう。

 

多くのお金を残したければ、保険ではなく、貯蓄で遺産として残せばよいのです。保険で残す必要はなく、保険加入に無理は禁物です。万一のための経済的保護、という保険の意味や使い方を理解しておきましょう。

 

身の丈にあった金額とは、扶養者が亡くなったあと、残された被扶養者に必要な生活費や学費などです。それはバランスシートやキャッシュフロー表から計算できます。

 

必要な生活費は、現在の生活費を参考にして算出しましょう。被扶養者1人あたりの生活費を計算し、その生活費が不要になるまでのトータルな金額です。子どもであれば、社会人になるまでの生活費や学費が必要でしょう。配偶者であれば、平均寿命までの生活費が必要です。

 

ただし、その金額をすべて民間保険で残す必要はありません。扶養者が亡くなった場合、残された財産があれば遺族に残ります。その額が十分であれば、保険加入は不要です。また、公的な社会保険で遺族年金を受け取れる可能性はあります。他にも、被扶養者が仕事に就けば、稼ぐ額も充当できます。

 

それでも足りないようであれば、最後に民間保険の加入を検討するのです。

 

人が亡くなる確率から考える

他にも考慮すべきことがあります。それは、人が死亡する確率です。誰もがいつかは亡くなりますが、その時期はさまざま。遺族に残す必要性がある時期に、亡くなるかどうかがポイントになります。

 

残すべき遺族や金額が多いときに亡くなる場合は保険が必要ですが、それ以外の時期であれば未加入でもよいのです。

 

男性は60歳、女性は70歳までに亡くなる確率は10%程度です(厚労省簡易生命表より)。60歳や70歳以降に亡くなったとしても、多額な保険金が必要な時期ではないはずです。あまり起こりえない確率に、保険料を払い続けるのは合理的・経済的ではありません。

 

もちろん、加入しているに越したことはないのですが、冷静になって、しっかりとした情報と知識をもってから、加入を検討すべきでしょう。

 

加入するにしても、誰にいくら残すのかを検討して加入するのが保険です。雰囲気や付き合いで保険に入るにしては、金額が大きすぎます。費用対効果を見極めましょう。

 

保険の種類は、死亡保険・医療保険・年金保険が代表的なものになります。医療保険や年金保険についても情報や知識を集め、加入するかどうかや保険金額などを決めていきましょう。

 

そもそも、公的保険である社会保険が生命保険替わりで、多くの人は加入しています。たとえば、民間保険の死亡保険・医療保険・年金保険は、公的社会保険の遺族年金・健康保険・傷病手当金・老齢年金などに該当。介護保険や障害保険も公的社会保険はカバーしています。

 

あくまで公的社会保険で足りない部分を民間保険で補うことを、忘れないでおきましょう。

 

 

田中 和紀

ファイナンシャルプランナー

 

※本記事は『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

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