高齢の父が開設しているNISA口座…そもそもどのようなもの?
生徒:私の80代の父は、NISA制度ができてすぐNISA口座を開設し、投資信託を買っています。
先生:それは素晴らしい!
生徒:父は昔から投資に関心の高い人でして…。そもそも「NISA口座」とはどのようなものでしょうか?
先生:証券会社で特定口座以外に個人が開くことのできる証券口座のひとつです。株式や投資信託で稼いだお金に税金がかからない非課税制度「NISA」がありますが、2024年から始まる新しいNISAでは、NISA口座で購入できる金額の上限が1800万円に引き上げられ、また、NISA口座を永久に使い続けることが可能となりました。しかも、途中で売却しても翌年には投資枠の再利用が可能になるという、とてもお得な制度です。
生徒:資産運用による利益に税金がかからないというのは大きなメリットですね。そもそも金融資産で運用したとき、税金はどれくらいかかるのでしょうか。
先生:一般口座や特定口座で株式や投資信託などで運用した場合、本来なら、配当金・分配金、売却して得た売却益などの利益に20%の税金がかかります。しかし、NISA口座で得られた利益は非課税です。税金はかかりません。
もし父が亡くなったら、「NISA口座」の相続や税金はどうなる?
生徒:万一、私の父がNISA口座を残して亡くなった場合、相続人にはどのような手続きが必要になるのでしょうか。相続税も非課税となるのでしょうか?
先生:NISA口座を持つ方が亡くなった場合、そのままにしていては、売却はもちろん、配当金・分配金を受け取ったりすることはできません。そのため、相続手続きが必要です。また、相続税がかかります。
生徒:具体的には、どういった手続きが必要になるのでしょう?
先生:相続人は、被相続人の死亡を知った日以後、遅滞なく、証券会社へ「非課税口座開設者死亡届出書」を提出します。NISA口座の株式や投資信託を相続人の特定口座へ移管する場合は、「相続上場株式等移管依頼書」も併せて提出します。その際、被相続人のNISA口座と、相続人の特定口座は、必ず同一の証券会社になければいけません。
生徒:相続人には「相続税」がかかるということですが、相続発生時までの値上がりした金額には、併せて「所得税」もかかるのでしょうか?
先生:高齢者が長期運用していると、株式や投資信託が値上がりして、NISA口座には含み益が発生している可能性があります。ですが、相続発生時までに値上がりしたことで生じた含み益は、非課税となります。つまり、所得税はかかりません。
生徒:NISA口座で投資した商品の取得価額よりも、相続発生日の時価が大きい場合、その値上がり益については、税金がかからないということですね。その場合、相続人の特定口座には相続発生日の時価で移すということでしょうか?
先生:よくわかりましたね。その通りです。相続が発生したときには「株式や投資信託を時価で売って解約した」とみなされるからです。
生徒:私も同じくNISA口座を持っていますが、父のNISA口座の商品を私のNISA口座へ移すことはできますか?
先生:相続が発生した時点で、亡くなった方のNISA口座は終了します。そこから、相続人の証券口座に移す場合、一般口座または特定口座に移すことになり、NISA口座に移すことはできないのです。たとえ相続人がNISA口座を開設していたとしても、相続によって取得した株式や投資信託はNISAの適用を受けられず、通常通り課税されることになります。
「相続税」と「所得税」…それぞれの扱いに違いに注意を
生徒:NISA口座の商品を相続人が引き継ぐときには、相続発生時の時価によるものとお聞きしましたが、相続税はその時価に対してかかってくるのでしょうか?
先生:相続税は、所得税の取り扱いと異なるため注意が必要です。「所得税」は、一般的な相続において、株式や投資信託の取得価額は、被相続人が取得した際の価額が引き継がれます。この点、NISA口座から受入れた株式や投資信託の取得価額は、相続発生日の時価が引き継がれます。
生徒:なるほど…。
先生:それに対して「相続税」では、株式や投資信託の相続税評価額は、「相続開始日の終値」「その月の終値の月間平均額」「前月の終値の月平均額」「前々月の終値の月平均額」の4つの価格のなかから、最も低い金額を選択することができます。つまり、相続税評価額は時価と異なるのです。
生徒:そうなのですね。大変勉強になりました。ありがとうございます。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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