銀行の担当者にすぐ見抜かれる「粉飾」などの不正
実は、納める税金を少なくしようと赤字ギリギリの決算をする人に対し、実際は赤字なのに黒字に見せかけ税金を納めようとする人もいます。いわゆる粉飾決算です。あえて「会社が儲かっている」ように見せるにはもちろん理由があります。そのほうが格付けの評価が上がり、融資を受けやすくなるだろうと考えるからです。
会社が黒字に見えるように体裁だけを整えるときに用いられる方法として、「減価償却費」の数字を調整する方法があります。厨房の設備や内装などを購入した場合、支払った投資額を決められた年数に分割して費用計上していく「減価償却費」は、最初の支払い以降は現金が動かず経費だけが計上されます。これを決算書に書かなければ経費が計上されていないので、その分利益が上がっているように見えるわけです。
このような方法を用いた決算書は、銀行の担当者が見れば残念ながらすぐに見抜かれてしまい、「正しく減価償却を計上していたら実態は赤字」というように銀行内で処理されてしまいます。融資を受けられるようにと粉飾するより、まずは経営全体の「カネ」の基盤を立て直すほうが先決でしょう。
また、「赤字だからもう融資は受けられない」と諦めてしまう前に適切な専門家に相談してみるのも1つの方法だと思います。プロの目を通すことで、粉飾決算をしなくても適正な手段で黒字化する方法が見つかるケースも数多くあります。
「減価償却」の考え方と償却の対象になるもの
<減価償却とは?>
減価償却とは、買った時に一度に費用にしないで、毎年少しずつ費用にすることをいいます。たとえば、800万円の内装設備を購入しても、その設備は長年にわたって使用するものです。このような場合に、かかった費用を何年間かにわたって費用にしていくわけです。
上記の800万円の内装設備を8年間で費用計上するなら、たとえば毎年100万円(=800万円÷8年)ずつ費用としていくという具合です。しかし、実際には購入時に800万円を支払っていますので、減価償却費は費用ではあるものの2年目以降は実際の現金は動きません。
こうした数字の処理が決算書の見方をむずかしくする一つの原因かもしれませんが、重要なことなのでぜひ知っておいてください。
◎減価償却の対象となるものは…
有形固定資産(建物、建物附属設備、建築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品など)、無形固定資産(ソフトウェア、営業権、特許権、商標権など)。1年限りで消耗するものではなく、長期間使用するものです。
◎減価償却の対象とならないものは…
土地、10万円未満のもの。また、中小企業の特例として30万円未満のもの(一定の条件あり)。
◎減価償却費の期間は…
何年間かけて費用にしていくかは、そのものの物理的な寿命で決まるものではなく平等に定められており、種類によって耐用年数表というものに示されています。その表に示された年数をもとに、毎年の減価償却費を計算します。