一度返済条件を変更すると二度と融資が受けられない!?
銀行の融資は格付けによってほぼ決まり、そして、格付けは決算書の内容によってほぼ決まります。しかし、今期の決算書がよいからといっても油断はできません。銀行融資の申請には3期分の決算書を提出しますから、過去の経営状態も融資の行方を左右することになります。新規出店を計画するなら、この点をしっかり頭に入れておかなければなりません。
【Case Study】安易なリスケジュールに要注意
AさんとBさんは、ともにレストランを5店舗経営しています。前期は5店舗のうち3号店の売上があまりよくありませんでしたが、今期のがんばりでようやく他店に追いつくことができました。そこで、また新たに1店舗を増やしたいと、銀行に相談してみることにしました。
Aさんの場合
Aさんは、早速付き合いのある銀行に連絡し、融資の相談をすることにしました。3号店の売上がよくなかったときに、負担が軽くなるように返済条件を変更してもらったこともあり、今回も無理を聞いてもらえると思ったからです。
しかし、審査の結果、新たな融資をしてもらうことはできませんでした。「いままで融資をしてくれていたのに、どうして?」と、不思議に思いながらも、出店資金の目処がつかず、次の店舗の出店は見合わせるしかありませんでした。
Bさんの場合
Bさんは、早速付き合いのある銀行に連絡し、融資の相談をすることにしました。前期は3号店の売上がよくありませんでしたが、他の店舗は順調だったため借入金の返済が滞ることはありませんでした。その店舗の状況も落ち着いて、今回、前向きな姿勢で新たな出店に取り組んでいることを銀行に相談した結果、よい条件で融資してもらうことができました。
うまくいく人、いかない人。そこには「格付けが下がる」壁がありました。
リスケを防ぐために当初の借入れ条件は十分に検討を
Aさんは気付いていなかったようですが、今回の融資の審査でAさんの格付けは間違いなく落ちています。おそらく12のランキング一覧の「要注意先」または「要管理先」として格付け8または9に位置しているでしょう。なぜなら、融資の相談の前に返済条件の変更をおこなっているからです。返済期間を延長したり元本の支払いを待ってもらったりなど、一度銀行と取り決めた約束を守ることができないと、経営状況に「問題がある」と見なされて格付けが下がってしまいます。
つまり、借りてから当初の条件を変更(リスケジュール)すると格付けが8以下になってしまい、それ以後融資が受けられなくなってしまう(=自己資金でしか出店できなくなってしまう)可能性が高く、その時点でその後の出店計画を諦めなくてはならないかもしれません。
そうならないためにも、借りるとき(多くの場合は出店するとき)に出店計画をしっかり立てて(筆者の著書『1店舗から多店舗展開 飲食店経営成功バイブル』第3章参照)、「この借入条件で本当にいいのか?」ということを十分に検討してから借入を実行すべきでしょう。
「以前も貸してもらえたのだから今回も大丈夫」などと簡単に考えていると、思わぬ壁にぶつかることがあります。Aさんも、リスケジュールすれば後々どのようなことになるかを知っていれば、また違った結果になっていたことでしょう。
その他にも格付けが下がることがあります。たとえば、銀行はみなさんから提出された決算書をチェックしていますが、その中で、「この資産は価値がない(または低い)」といった評価をされると、結果として格付けを下げられることもあります。
それが事実であればまだしも、それが誤解であれば本当にもったいないことです。そのように誤解を招かないようにすることも非常に大切で、その方法については次回でお話します。