節税のために利益を圧縮したところ・・・
自分で思っているほど格付けが上がらない。返済条件の変更もその原因の1つですが、このほかによくあるのが「節税のしすぎ」です。税金の額を抑えるために利益を少なくしていると「この会社は利益が上がっていない」と見なされてしまいます。
儲かっていない会社には誰だって融資はしたくないものです。決算のときに税理士に依頼して決算書を作成する会社は多いですが、今後の経営のことなども相談しながら進めることが大切です。
【Case Study】税金対策を考える
AさんとBさんは、それぞれ5店舗の和食店を経営しています。創意工夫のあるメニューで人気があり、お店の経営は順調でした。しかし、予想以上に利益が出ていたので、なにか税金対策を考える必要があるのではないかと思いはじめています。また、このままいい状態が続けば、今後も店舗を増やしたい気持ちもあります。
Aさんの場合
Aさんは決算の前に顧問税理士に状況を相談しました。そして、税理士から「現状のままでは利益がたくさん出ていますから税金もかなり高いですよ」と言われ、「税金をそんなに支払うのは嫌だ」とできるだけ納税額を抑えた決算をおこないました。
しかし、翌年にAさんが新たにお店を出店しようと銀行に相談をしたところ、思うように融資を受けることができなくなっていました。
Bさんの場合
Bさんは知り合いのコンサルティング会社に相談しました。コンサルティング会社の担当者は「現状のままでは利益がたくさん出ていますから税金もかなり高いですよ」と言いましたが、さらに「とはいえ、極端な節税はおすすめしません。今後も出店される計画があるようですし、バランスよく税金対策をとるほうがいいですね」とBさんにアドバイスしました。Bさんは言われたとおり、節税対策をとりながらも利益もきちんと残し、納税もすませました。
翌年、Bさんが新たにお店を出店しようと銀行に相談したところ、以前よりもよい条件で融資を受けることができました。
うまくいく人、いかない人そこには「税金に対する姿勢」の壁がありました。
「税務」と「財務」のバランスが経営の基礎
税金は、お店の売上から仕入れや経費などを差し引いた利益に対してかかるものなので、利益が多くなればその分納める税金も増えていきます。そこで納税の負担を抑えられるように、さまざまな節税対策をおこなって利益をできるだけ抑えようとするオーナーも多いですし、そのようにアドバイスをする税理士もたくさんいます。
しかし、店舗や会社の経営には、税金対策の視点で考える「税務」だけでなく、資金調達の視点で考える「財務」も必要です。Aさんのように節税対策にばかり気を取られていると、経営状態がよくないと見なされて格付けが下がり、融資が思うように受けられなくなることもあります。
やみくもに節税対策をするのではなく、Bさんのように「来期に2店舗を出店しようと計画していて、その出店資金の融資を受けたい。そのためには今期の決算でこれくらいの利益を出しておいたほうがいい」というような具合で、適切な利益を上げながら適切な金額の税金を納める。このバランスが店舗経営の基礎づくりには重要だと思います。