コロナ対応やウクライナ危機で主要国の「借金」が激増
――ただ、先ほどの話のように、企業の景況感が悪化し、景気が冷え込むリスクがあるならば、懸念も生じるのではないかと考えてしまいます。
荒磯「そうですね。次の投資テーマをいまから想像しておくことが大切です。そこで私が注目したのが、2023年8月に米国で開催された『ジャクソンホール会議』です。
ジャクソンホールは地名で、米国のワイオミング州にある風光明媚な避暑地のこと。金融街とはまったく異なる場に中央銀行の総裁が一同に集まるオフサイト・ミーティングであるだけに、大所高所の観点で議論されるのが特徴です」
――今回のジャクソンホール会議はあまりニュースにならなかった印象ですが、どこに注目されましたか?
荒磯「今回の会議のなかでは、『経済の低成長』という話題が取り上げられていました。最近の利上げで経済成長のケアは後回しになっていると私たちは解釈していたのですが、政策担当者も心のなかでは成長を気にしているのだなと読み取れました。
また、この低成長には『グローバル化のとん挫』が影響しています。[図表4]をみると、中国や米国、G7といったいわば世界経済のエンジンとなる国々で政府の債務(=借金)が激増しているのがわかります。
2020年からのコロナ禍や2022年に始まるウクライナ危機といった、政府が対応すべき事象が続いたのがその理由です。
借金が増加しているということはつまり、今後、なにかしらの危機が発生した際に、財政出動できる余裕があまり残されていないことを示しています。したがって、ここから先は投資先の国や地域の選別が難しくなっていくと考えられます」
次の投資対象となるのは、余裕のある“勝ち組国家”
――どういった国を投資対象とし、あるいは避けるべきと考えたらいいでしょうか?
荒磯「一言で言えば『優勝劣敗』です。財政に余裕がない国や強い産業を持たない国は厳しいでしょう。
反対に、信用格付けが高い国や自国内にサプライチェーンを多く持っている国は投資対象になりえます。米国やカナダ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、EU加盟国がそうですし、もちろん日本も該当します」