(※画像はイメージです/PIXTA)

2025年には、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳の「後期高齢者」に突入します。その子の世代はちょうど「就職氷河期世代」のボリュームゾーンにあたり、親の介護の問題を抱えることになります。老人ホームか、在宅介護か、いずれにしても、「お金」の問題が発生します。それぞれについて解説します。

就職氷河期・非正規社員の収入状況

まず、就職氷河期世代の非正規で働く人々の収入に関する統計データをみてみましょう。厚生労働省の「令和4年(2022年)賃金構造基本統計調査」によると、40代・50代の非正規雇用労働者の月収は以下の通りです。

 

・40歳~44歳:21万7,600円

・45歳~49歳:21万2,800円

・50歳~54歳:21万1,900円

・55歳~59歳:21万6,700円

 

これを手取りに換算すると月約16万円です。自分が食べていくだけでも精一杯です。その状態でもし、親が介護状態になれば、さらに、経済的負担が重くのしかかることになります。

 

すなわち、親が介護状態になった場合、老人ホームに入居してもらうか、あるいは、働きながら介護を続けるかということになります。

親に老人ホームに入居してもらう場合

まず、老人ホームに入居させる場合はどうでしょうか。厚生労働省の資料によると、介護施設の月額費用は、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなどの有料老人ホームで月18.9万円、サービス付き高齢者向け住宅で月14.0万円です。

 

この費用を賄う手段は、第一に親自身の年金です。厚生労働省の調査によると、国民年金受給者の月平均受給額は5.6万円、厚生年金受給者の月平均受給額は14万円ほどです。平均値でみると、足りないケースが相当数生じることが想定されます。

 

もし、この親自身の年金だけで月額費用が賄えない場合は、差額については親の貯蓄を取り崩すか、または子に援助してもらうしかありません。しかし、子にその資力がない場合も考えられます。子が老人ホームに入居させるためのお金を援助したくても、できないケースが出来します。

 

「団塊の世代」がすべて75歳の「後期高齢者」に突入する2025年以降、そのようなケースは今後、増えていく可能性があります。なぜなら、その子の世代はいわゆる「就職氷河期世代」のボリュームゾーンにあたるからです。

働きながら親の介護をする場合

親を老人ホームに入居してもらうのが経済的に難しい場合、働きながら親の介護をせざるを得なくなります。その場合、現実的な考え方としては、公的制度を可能な限り利用するということにならざるを得ません。

 

以下の制度を利用することが考えられます。

 

・介護休業と介護休業給付

・高齢者住宅改修費用助成制度

 

それぞれについて説明します。

 

◆介護休業と介護休業給付

まず、介護休業を取得し、介護休業給付金を受給する方法があります。これは、家族の介護のために仕事を休業する場合に雇用保険から給与の67%(約3分の2)を受け取れる制度です。

 

介護休業は、家族1名あたり93日を限度に、計3回まで受給することができます。介護休業を取得するための条件は以下の2つです。

 

【介護休業を取得する条件】

1. 常時介護を「2週間以上」必要とする状態にある家族を介護するために休業すること

2. 期間の初日と末日を明らかにして事業者に申し出を行うこと

 

非正規雇用の場合でも、介護休業を取得し、介護休業給付金を受給することができます。ただし、労働契約の期間が、介護休業開始予定日から93日経過日から6ヵ月後までに満了することが明らかである場合は、取得することができません。

 

「93日・計3回まで」というのは、介護に関する長期的方針を決めるために必要な期間として想定されたものです。ある程度まとまった日数の休業を取得することが前提となっています。したがって、たとえば、通院等の付き添いや、介護サービスの手続の代行、ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせを行うために1日、あるいは数時間だけ休業するというのには向きません。

 

その場合は「介護休暇」という制度がありますが、有給かどうかは事業所の判断なので、実際には有給休暇を優先して消化することになるとみられます。

 

いずれにしても、非正規雇用の労働者にとっては、現時点では決して使い勝手の良い制度とはいえません。

 

介護休業給付金については最低でも手取りの満額を保障するとか、介護休暇の場合にも給付金を受け取れるとかの制度改定が急務といえます。

 

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