(※写真はイメージです/PIXTA)

総務省の家計調査報告によると、高齢者夫婦ふたりの標準モデルの年金支給額は264万円です。少なく感じる人もいるかもしれませんが、意外に暮らしていける金額であると、金融業界25年のキャリアを持つFP田中和紀氏はいいます。本記事では、同氏による著書『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)から、日本の年金制度について、一部抜粋してご紹介します。

年金を手厚くする「私的年金」

企業型確定拠出年金に加入する2つの大きなメリット

確定拠出年金とは、多くの大企業で利用が広がっており、年金の積み立てを会社の中で行っていくものになります。企業型確定拠出年金(DC)といって、会社が積立金を支給し、従業員が60歳まで積み立てていくものです。単純に積み立てるだけではなく、運用が可能です。投資信託などの投資商品を積み立てることも可能で、その積み立てた投資信託が値上がりすれば利益となります。運用がうまくいけば、積立金以上のお金を受け取れるのです。

 

運用は難しいと思われがちですが、分散・長期・積立という3つの投資手法を実践すると、うまくいく可能性が高いといわれています。ノーベル経済学賞を受賞したモダンポートフォリオ理論に沿ったやり方で、「投資の原理原則」といわれています。導入企業では、この投資法を社員教育で行い、理解したうえで運用した人が実績を上げているケースも多いようです。

 

もうひとつの特徴は税制優遇です。確定拠出年金に加入すれば、税制優遇が受けられます。

 

企業から支給される給与や賞与には、税金や社会保険料が引かれますが、確定拠出年金で従業員に支給する毎月の掛け金は、税金や社会保険の対象ではありません。企業が1万円を支給すれば、そのまま社員の掛け金に1万円が積み立てられます。

 

一方、給与が1万円支給されるのであれば、従業員の口座には税金や社会保険料が引かれ、7,000円とか8,000円になってしまいます。

 

この優遇が毎月、そして60歳まで続くのです。掛け金などにもよりますが、合計で100万円以上もの節税につながることもあります。

 

運用益に対しても非課税です。投資で年に100万円儲かったとしても、課税され手元に80万円程度しか残りません。しかし、確定拠出年金の投資では、どんなに儲かっても利益金に課税されません。儲かれば儲かるほど節税効果も高くなります。

 

このようにメリットが多い確定拠出年金ですが、注意することもあります。まず、60歳までお金が受け取れないことです。年金資金の積み立てなので、途中でお金を引き出せません。転職などした場合は、積み立てたお金を移動させて運用を続ける必要があるのですね。

 

さらに、お金を受け取る際に課税されます。60歳以降にお金を引き出す際は、一時金で引き出せば退職所得、年金のように分割で引き出せば雑所得扱いになります。それぞれ控除があり、優遇はありますが、こうした知識をアタマの片隅に入れておく必要があるのです。

 

個人型確定拠出年金「iDeCo」は誰もが加入できる!

iDeCoは個人型確定拠出年金です。個人が金融機関でiDeCoの口座をつくり、積み立てが可能です。仕組みは企業型確定拠出年金とほぼ同じで、運用可能で税制優遇があります。

 

会社で企業型確定拠出年金を導入していない場合や、自営業・専業主婦の方は、iDeCoで積み立てを行うことが可能です。

 

各金融機関で独自の運用商品を取り入れており、選択できる金融商品に違いもあります。また、運営管理手数料などの違いもあり、金融機関を選ぶ際は注意しましょう。大手ネット証券などの手数料は、比較的安いようです。

 

上限額はありますが、企業型と個人型を併用して積み立ても可能となっており、節税や運用でニーズがあればうまく活用しましょう。

 

 

田中 和紀

ファイナンシャルプランナー

 

※本記事は『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

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