イスラエル・ハマス戦争で地政学リスク高まるが…「株価への影響は限定的」か【マクロストラテジストが解説】

イスラエル・ハマス戦争で地政学リスク高まるが…「株価への影響は限定的」か【マクロストラテジストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

イスラム組織ハマスによるイスラエルへの急襲により、地政学リスクが高まっています。一方、金融市場をみてみると、地政学リスクの高まりとは裏腹に、日米の株価は底堅い推移を続けています。いったいなぜなのでしょうか。フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が「今後も株価の見通しが明るい」理由を、複数のデータをもとに解説します。

米国債市場は“過去最長・最大”のドローダウン

さて、[図表3]に示すとおり、米国債市場では、米国債のトータルリターン指数で測った「ドローダウン(過去最高値からの下落;過去最高値割れ)」が9月末時点までで38ヵ月連続して過去最長におよび、ドローダウン率(過去最高値からの下落率;-18.0%)も昨年10月時点の過去最小値(-18.4%)に近づいています。

 

[図表3]米国債トータルリターン指数(1973年3月末=100)とドローダウン
[図表3]米国債トータルリターン指数(1973年3月末=100)とドローダウン

 

ちなみに、S&P500(価格指数)で同じチャートを作ると、[図表4]のようになります。

 

[図表4]S&P500(1973年3月末=100)とドローダウン
[図表4]S&P500(1973年3月末=100)とドローダウン

 

気になるのは、「米国債市場でこれほど長く、これほど大きなドローダウンがあると、その後なにが起きるのか」です。

 

そこで、[図表5]では、データが取れるかぎり、1973年から直近までの合計71回のドローダウンすべてを取り出して(→単月の過去最高値割れを含む)、最大ドローダウン率が「-5%以下」か、ドローダウン継続期間が10ヵ月以上となった、全11事例を取り出しています。

 

[図表5]米国債トータルリターン指数の最大ドローダウンが-5%以下か、ドローダウン継続期間が10ヵ月以上の事例
[図表5]米国債トータルリターン指数の最大ドローダウンが-5%以下か、ドローダウン継続期間が10ヵ月以上の事例

 

【図の右側】にある【備考】をみると、そうしたドローダウンが生じた期間は、そのすべてが「金融引き締めを実行していた期間」か、「景気後退明けの景気回復期」であることが確認できます。直観どおりです。

 

米国債に大幅なor長期間のドローダウンが生じると、株価は“たいてい上昇”

[図表6]は[図表5]に【右3列】を付け足したもので、先ほどの11事例のときの株価の動向をみています。

 

[図表6]米国債トータルリターン指数の最大ドローダウンが-5%以下か、ドローダウン継続期間が10ヵ月以上の事例
[図表6]米国債トータルリターン指数の最大ドローダウンが-5%以下か、ドローダウン継続期間が10ヵ月以上の事例

 

なかでも【右から3列目】は、米国債のドローダウンが生じた期間におけるS&P500の騰落率を表示しています。言い換えれば、米国債のドローダウンが始まったときの株価と終わったときの株価を比べたものですが、そのほとんどがプラスです。

 

すなわち、米国債に大幅なor長期間のドローダウンが生じる間には株価はたいてい上昇しています。

 

同じく【右から3列目の一番下】=【今回のケース】をみると、今回も株価は、2020年8月に米国債のドローダウンが始まってから、いまだ「約3割高」の水準です。別途、例外は【上から3行目】の1987年のブラック・マンデー時で、このときは米国債の下落とともに株価も大幅に下落していることが確認できます。

 

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次ページとはいえ昨年は、株価がかなり下がった気がするが…

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