日本製鉄、コニカミノルタ、JT…「高配当企業」のなかでも特に魅力的な「株式投資」の対象は?【多摩大学大学院MBA客員教授がデータで解析】

日本製鉄、コニカミノルタ、JT…「高配当企業」のなかでも特に魅力的な「株式投資」の対象は?【多摩大学大学院MBA客員教授がデータで解析】

ビジネスや投資において、データの応用は非常に重要です。感覚ではなく、数字化して理解することでリスクを未然に防いだり、ベターな選択ができたり、問題が起きても適切な解決方法を選んだりすることができると、多摩大学大学院MBA客員教授・前田英志氏はいいます。本記事では、同氏の著書『お金から自由になる人生の設計書』(ごきげんビジネス出版)より、ビジネスや投資におけるデータの活用の重要性について解説します。

投資編「コロナ前とコロナ環境下でのリスクの違い」

次に株式投資の話である。ビジネスのリスクは標準偏差を用いるが、株式投資のリスクも実は同じである。ただ、統計的に正しく判断するためには工夫が必要で、その工夫も含めて具体的に見ていこう。


まず株式投資については、リスクが明瞭に示されないことが問題であると考えている。統計手法としてはリターンの標準偏差を用いればよいが、そもそもリターン自体が予測値で曖昧というところがあり、さらに、その曖昧なものの標準偏差だから、曖昧さにより拍車がかかる。


 では、どうしたらいいのか? その答えは、読めない予測値で議論するのはやめて、実績値で議論する。かつ、株価の値上がり率で議論すると、いくらで買って、いくらで売ったかという話が入ってきて、ここも曖昧になるので、ズバリ株価自体の標準偏差で議論すべきと考える。


ただここで注意が必要なのは、株価の違う企業同士を比較することを考えると、標準偏差だと不十分ということである。単純には、株価が10,000円の企業と100円の企業では、同じリスクのときに、前者の企業のほうの標準偏差が100倍になってしまう。

 

この誤った解釈を避けるために、標準偏差を平均で割った変動係数を、株価変動のリスク評価のために使用する必要がある。

 

具体的に見ていこう。次の表に、各業種から利回り4%以上の高配当企業をそれぞれ1社以上選択し、その企業の変動係数を示している。平常時(2016年7月~2019年6月)とコロナ時(2019年7月~2022年6月)の2つの時期で、月次の始値を使って算出した。比較のために、いちばん下に日経平均の変動係数も入れている。

 

[図表2]業種ごとの高配当企業の変動係数(平常時、コロナ時)

 

ここでは、世に名前が広く知られていて、かつ、とくに高配当の企業を選んでいる。これを見ると、企業による変動係数の差、すなわちリスクの差が大きいことがわかると思う。これをわかりやすくするために、グラフで以下に示す。横軸は平常時の変動係数、縦軸はコロナ時の変動係数である。着目すべきポイントを(ア)(イ)(ウ)で示している。
 

[図表3]業種ごとの高配当企業の変動係数(平常時、コロナ時)

 

(ア)は日経平均より、平常時もコロナ時もリスクが低い企業群である。ポートフォリオ理論をベースに、日経平均は種々の企業の集合体でお互いにリスクを消し合うため、いちばんリスクが低いといわれることがある。この表より、それは正しくなく、たしかに日経平均のリスクは十分低いが、それ以上に低い単体の企業群があることを理解する必要がある。


(イ)と(ウ)を見ると、必ずしもコロナ時のほうが平常時よりリスクが高いわけではない、ということがわかる。あれだけのことが起こったから、普通の感覚では、コロナ時はリスクが全体的に高そうに感じられるが、そうではない。むしろ、コロナ時のほうがリスクが下がっている企業はたくさんある。感覚ではなく、数字化して自分のアタマで理解することが大切である。


最後に、リスクの高い企業の取り扱いについて。リスクが高くても魅力を感じる企業があると思う。たとえば、変化対応力が高く何があっても生き延びられそうな企業は、株式投資の対象として魅力がある。こういう場合は、複数の企業を組み合わせてリスクを下げることを考えるのがよい。

 

 

前田 英志

フィンファイ株式会社創業者 兼 代表取締役社長

多摩大学大学院MBA客員教授

 

※本記事は『お金から自由になる人生の設計書 年収にかかわらず経済的自立を実現する方法』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

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