円安&インフレにあえぐ〈ジリ貧ニッポン〉…「現預金は目減り/株は割高/不動産は価格下落」の悲惨な状況【FPが解説】

円安&インフレにあえぐ〈ジリ貧ニッポン〉…「現預金は目減り/株は割高/不動産は価格下落」の悲惨な状況【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

2022年から物価上昇が続き、食料品や日用品はもちろん、ガソリンや電気料金などの高騰が続いています。このような厳しい状況下、住宅ローン金利、現預金、金融資産、不動産の価格に与える影響について考察します。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

物価の上昇、2023年1月には前年同月比で4.3%を記録

日本では2022年から物価の上昇が続いています。総務省によれば、消費者物価指数は、2022年4月頃から2%後半から3%台と高い水準で推移しており、2023年1月には前年同月比で4.3%もの上昇を記録しました。

 

インフレ率が高くなると、景気が加熱し過ぎることを抑えるため、中央銀行は政策金利を上げます。

 

実際に「2%インフレ」を目標としていた日銀の金融緩和政策で、住宅ローン金利は低金利の状態が続いていましたが、日銀が部分的に金融緩和政策を修正したため、住宅ローン金利も上がりつつあります。

 

しかし、現在のインフレは、景気が加熱したことが原因ではなく、海外からの輸入原料が値上がりし、物価が上がったことが原因だといえます。そのため、賃金上昇を伴う本格的なインフレが実現するまでは、金利が上がることはないと考えられます。

金利上昇局面、余剰資金は住宅ローン一括返済より資産運用へ

とはいえ、もし金利が上がったとしても、即座に家計がピンチになるとは限りません。確かに金利が上昇すれば、住宅ローンなどの金利の支払いは増えますが、それと同時に株式や投資信託が値上がりするからです。

 

また、インフレとは「モノの値段が上がる」ことですが、逆にいえば「お金の価値が下がる」ということでもあります。

 

その観点から考えると、住宅ローンなどの借入金が値上がりすることはないため、金利は上がってもローン負担自体は軽くなるのです。したがって、金利が上がっている時期に余裕資金がある場合は、繰り上げ返済ではなく、資産運用に回すことをおすすめします。

現預金だけの資産構成は心配だが、株や不動産にも注意が必要

しかし、問題となるのは現預金です。2%のインフレが続いた場合、たとえば、今年1,000円で買えたものが来年は1,020円に値上がりし、10年後には1,200円になってしまいます。単純に計算すると、現在1,000万円の預金は年2%のインフレが10年続けば820万円、20年続けば670万円の価値へと目減りしてしまいます。資産が現預金だけの人は、貧しくなる一方なのです。

 

現金資産がダメだとなれば、株式をはじめとする金融資産や、不動産への投資を増やすほうがいいように思えますが、金融資産については注意が必要です。

 

インフレが騒がれ出した時点で、株式市場の相場は将来のインフレを織り込んだ価格水準まで上昇しています。いまさら買うには遅すぎるのです。

 

また、個別企業の株価は、企業が将来稼ぐ利益を、市場金利にリスクプレミアムを加算した期待リターンで割り引いて計算されています。利益が増えることが予想されると株価は上昇しますが、金利が上昇することが予想されると株価は下落します。結果として、インフレによって金融資産が上昇するか下落するかはわからないのです。

 

一方、不動産は一般的にインフレに強い資産だといわれています。これは投資物件だけではなく、自宅も含まれます。貸家の場合はインフレが進むにつれて家賃の上昇が家計を圧迫する可能性もあるため、賃貸よりも持ち家がより有利になるといえます。

 

しかし、不動産がインフレに強いといわれていたのはこれまでの話であり、過去と現在ではインフレの状況が違ってきています。

 

最も大きな状況の変化は日本の人口減少、そして「持ち家を購入したい」という若者の減少です。不動産が売れなくなると、価格も下がることが予想されます。都心部で人気のある立地ならいいですが、郊外や地方の不動産については注意すべきでしょう。

 

 

岸田 康雄

国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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