バブル崩壊、紙きれになったゴルフ場の会員権
私はバブルのピーク時に、ゴルフの会員権を投資用に12個ほど所有していました。投資用とはいえ、接待などにも使えましたから一石二鳥。当時の日経平均株価は4万円に迫る勢いで、会員権もポンポンと値上がりしていきました。
たとえば、私の所有していた成田ゴルフ倶楽部の会員権の購入額は8,000万円程度。もちろん、銀行の融資がなければ、とうてい買うことはできない額です。ただ、当時の銀行は、ゴルフ場の会員権を担保にしさえすれば、ほぼ100%お金を貸してくれました。これがバブルというものです。
構造としては、2008年に起こったリーマン・ショックの引き金である「サブプライムローン」と同じです。アメリカの金融機関は、顧客が1億円で購入した住宅が、やがては1億2,000万円になることを見越して貸していました。
もし、金融機関の「不動産価格は上がる」という読みが外れたら……、そう考えるとぞっとしますが、実際、アメリカの不動産価格はがくっと下落して、お金を借りた人たちも、金融機関も、アメリカ経済もダメになってしまったのです。
これと同じことがバブルでも起こったのです。
そんなバブル崩壊の足音がひたひたと迫るなか、私は「天井近し」と察知しました。そこからは迷うことなく、ほぼすべてのゴルフ場の会員権を、専門の取引業者を通して、株でいうところの「成り行き」で売却しました。悠長に値段交渉している時間はないと考えたのです。幸い、世の中全体はまだバブル真っ只中でしたから、売れたものはすべて買値よりも高く売れました。
しかし、ひとつだけ売れなかった会員権が手元に残りました。横浜のゴルフ場の会員権で、売れなかった理由は、そのゴルフ場がまだオープンしていなかったからです。
その後、その会員権の価格はどうなったかといえば、お察しの通り、大暴落。それもそのはず、1990年4月以降、株価はどっと下がり始めていましたから、会員権も例外ではありません。
そのころ、件のゴルフ場がようやくオープンしたのですぐに売却したところ、買値4,000万円に対して、売値は1,000万円。差し引き3,000万円のマイナスですが、即刻売りました。さらに後、そのゴルフ場は倒産し、会員権は紙きれになりました。
私がこの経験を通して学んだ教訓は、投資では買いは慎重に少しずつ、売りは瞬時に判断しなければならないということでした。
しかし、これは言うは易しで、簡単ではありません。当時の私も、買値の4分の1で売却するのは正直、嫌でした。先に売った11個の会員権の含み益があったからこそ、瞬時に決断ができたのです。投資先を分散させることも大切です。