企業そのものの新陳代謝も悪い
労働者の流動性の低さは、企業自体の新陳代謝のスピードの遅さにもつながります。
株式の時価総額が大きい企業ランキングの顔ぶれを見ると、昭和から続く企業ばかりです。
一方、アメリカでは、2022年1月にApple社の時価総額が3兆ドルを超したことでニュースになったように、新興企業が続々と台頭します。Apple社は2000年代後半から急激に伸びてきた企業ですが、それが一気に、イギリスの国家予算を超えるような時価総額を叩き出したのです。
こうした環境は、優秀な若者たちにとって「起業」という選択肢を当たり前のものにします。労働市場の流動性も高いので、失敗への恐れも少ないでしょう。
そうすると、時代ごとの産業構造に応じた新しい企業が次々と生まれ、企業も産業自体も新陳代謝が活発になる─当然、こんな国では経済も成長しますから、給与も上がっていくわけです。
日本の大手企業も、時代に応じて変化しているからこそ続いているのですが、どうしてもアメリカのようなやり方に比べたらスピードは遅くなります。新型コロナワクチンも結局、日本では開発が間に合わず輸入に頼るしかなかったことも、それを証明しているのではないでしょうか。
永濱 利廣
第一生命経済研究所
首席エコノミスト
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