兄弟が相続人になる遺産相続で争いを回避するためにできること
兄弟が法定相続人になる場合、さまざまなトラブルが起こり得ることが分かりました。では、遺産相続で争いを回避するためにできることはあるのでしょうか。兄弟が法定相続人になる場合のトラブル対策を2つ紹介します。
①遺言書を書いてもらう
遺言書で遺産分割の方法を指定しておけば、遺言書に書かれている内容が最優先されます。そのため、兄弟間で遺産分割協議を行う必要もなくなるので、トラブルを防ぐ方法として有効と言えるでしょう。
特に兄弟が相続人になる可能性がある場合、前項でも説明したように「把握していない兄弟姉妹の存在」によって相続が円滑に進まない恐れもあります。
相続発生時に揉めないためにも「財産はAとBに半分ずつ相続させる」「不動産はAへ、現金はBへ相続させる」のように、法に沿った方法で遺言書を書いてもらいましょう。
②専門家に相談する
相続に関して不安な点がある場合には、専門家である弁護士や司法書士などに相談するのも一つの方法です。
兄弟には遺留分がないので、遺言の内容によっては兄弟間または被相続人の配偶者とトラブルに発展する可能性もあります。相続によるトラブルがすでに発生している、揉めることが予想される場合には、専門家に相談して対処を任せた方が良いでしょう。
被相続人の兄弟が相続人になる場合の注意点
亡くなった方の兄弟が相続人になる場合には、以下の3点に注意しましょう。
①代襲相続は1代(姪・甥)まで
相続人である兄弟が相続発生時にすでに他界している場合、その者の子が財産を相続できることを説明しました。
代襲相続は本来、子、孫へと代襲していくものですが、兄弟が法定相続人である場合に代襲相続を行えるのは、その子1代までとなります。
つまり、兄弟が法定相続人になる場合に財産を代襲相続できるのは、被相続人から見た「姪・甥」までです。
②相続税額が2割加算される
兄弟が法定相続人になる場合、相続税額が2割加算されます。「相続税の2割加算」とは、配偶者・子・直系尊属以外が法定相続人になる場合は、相続税額が2割増になるという規定です。兄弟姉妹は2割加算の対象なので、相続税が発生する場合には相続税額が2割増されます。
例えば、相続税額が1,000万円だった場合「1,000万円×1.2=1,200万円」となり、1,200万円の納税が必要です。
しかし、相続税には基礎控除や非課税枠などが設けられており、合法的に相続税を節税する方法も多くあります。相続によって相続税の発生が見込まれる場合には、生前から節税対策について話し合っておくと良いでしょう。
③戸籍謄本の収集に手間と時間がかかる
兄弟が相続人になる場合、配偶者・子・直系尊属が相続人になるときと比べて、戸籍謄本の収集がとても繁雑になります。
被相続人の兄弟が相続人になる場合には「すべての兄弟姉妹」が相続人になるからです。そのため両親の戸籍謄本まで調べ、認識している兄弟以外にも兄弟姉妹が存在していないか調べる必要があります。
兄弟が相続人になる場合、戸籍謄本の収集に手間と時間がかかることも覚えておきましょう。
当人同士でしっかりと協議をすることが大切
相続が発生したとき、被相続人に子がおらず、両親と祖父母もすでに亡くなっている場合には、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になります。
ただし、遺言書がある場合には遺言が優先されるため、内容によっては法定相続分を相続できないケースもあります。遺言内容に不満を感じたとしても兄弟姉妹には遺留分が認められていないので、遺留分侵害額請求をすることはできません。
このような理由から、兄弟が相続人になる場合には財産をめぐってトラブルに発展することがあります。兄弟が相続人になる可能性があるときには、当人同士でしっかりと協議することが大切です。話し合いや判断が難しいのであれば、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
できるだけ兄弟間で揉めず、円滑な遺産相続を行えるように対策を考えましょう。
立山 慶之
司法書士法人みどり法務事務所 司法書士