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相続が発生したとき、相続人として思い浮かべるのは「配偶者・子・両親」ではないでしょうか。しかし状況によっては、被相続人(簡単に言うと「亡くなった方」のことです)の兄弟が相続人になるケースもあります。そして、兄弟が相続人になる場合、兄弟間や配偶者との間で揉めることも少なくありません。どのような状況のときに兄弟が相続人になり、なぜトラブルが起こりやすいのでしょうか。司法書士法人みどり法務事務所・所属の司法書士、立山慶之氏監修のもと解説します。

被相続人の兄弟が相続人になるときに知っておきたいこと

ここまで、亡くなった方の兄弟が相続人になるパターンについて説明してきました。

 

そして兄弟が相続人となる場合に、必ず知っておきたいのが「兄弟には遺留分がない」ということです。ここでは、遺留分について説明していきます。

遺留分とは?

「遺留分」とは、法定相続人が最低限の遺産を確保できる権利のことです。もし遺言等によってその権利を侵害された場合、「遺留分侵害額請求」を行えば遺留分に相当する金額を取り返すことができます。

 

遺留分は「法定相続分の1/2(両親または祖父母が相続人の場合は1/3)」です。被相続人に配偶者と子2人がいる場合には、配偶者の遺留分は財産の1/4、子はそれぞれ1/8ずつになります。

 

しかし、被相続人の兄弟には遺留分がありません。遺留分が認められていない理由には、以下の2つが挙げられます。

 

・被相続人との関係が遠い

 

・兄弟(姉妹)には代襲相続があるから

 

兄弟には代襲相続があるため、亡くなった方からみると遠い親戚である甥や姪が財産を相続する可能性も出てきます。その場合、兄弟に遺留分を認めていると甥や姪にまで遺留分が発生することになり、被相続人が作成した遺言の効力が一部否定されてしまう恐れもあります。

 

「それは遺言を作成した遺言者にとって酷なのではないか?」という理由により、兄弟(姉妹)には遺留分を与えないとされています。遺留分がないと、どのような問題があるのでしょうか。

遺留分侵害額請求ができない

遺留分を侵害されたら、遺留分侵害額請求によって遺留分に相当する金額を取り返せると説明しました。しかし兄弟には遺留分がないので、遺留分侵害額請求をすることはできません。

 

兄弟が法定相続人となる場合、仮に遺言書に「恋人にすべての財産を遺贈する」と書かれていたとしても成す術がないということです。

被相続人の兄弟が相続人になる遺産相続で揉めやすいケース

兄弟が法続人になる場合には、通常の相続と比べてトラブルが起こりやすいといわれています。では実際に兄弟の相続によってトラブルが発生するのは、どのようなケースがあるのでしょうか。代表例を2つ見ていきましょう。

①配偶者との相続協議が進まない

配偶者と被相続人の兄弟姉妹が共同相続人になる場合、話し合いがうまくまとまらないことがあります。配偶者と被相続人の両親が相続人になる場合には、被相続人の両親が自分の子の配偶者と争ってまで財産がほしいというケースはなかなかありません。

 

一方で被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合には、配偶者との心理的距離感が遠いため「もらえるものはもらいたい」「もらう権利がある」と考える方も多いです。

 

その場合、配偶者と被相続人の兄弟姉妹間で相続に関する話し合いが難航し、最終的に訴訟になってしまうことも珍しくはありません。

②把握していない兄弟がいた

被相続人の兄弟が相続人になる場合には、相続人を確定するために被相続人と両親の戸籍謄本からすべての兄弟姉妹を調べます。

 

この過程で把握してない兄弟姉妹がいることが発覚した場合、トラブルに発展することが多いです。この時点での兄弟姉妹の発覚には「両親に隠し子がいた」「父は前妻との間にも子がいた」「家族に秘密で養子縁組をしていた」などが挙げられます。

 

このような場合、存在が発覚した兄弟姉妹は全員法定相続人になります。面識のない者同士で話し合いをするだけでなく、想定外の兄弟姉妹がいることによって相続分も減るので争いは避けられないでしょう。

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