法的効力がある「自筆証書遺言」をPCやスマホでネット作成
生徒:最近「デジタル遺言が制度化される」という記事を読んだのですが、「デジタル遺言」とはなんでしょうか?
先生:デジタル遺言とは、法的効力がある自筆証書遺言を、パソコンやスマートフォンを使ってインターネット上に作成し、保管できる制度のことです。現在の自筆証書遺言だと、本人確認や意思確認の手段として、全文の自署、日付、署名、押印が必要ですが、インターネット上ではそれができなくなることから、代わりとなる本人確認手段や改ざん防止の仕組みが必要とされています。
生徒:本人確認や意思確認のやり方が問題となるわけですね?
先生:そうです。その点については、ネット上での顔撮影、マイナンバーや顔認証、電子署名などの利用が検討されています。
生徒:デジタル化すれば、改ざん防止につながるのではないでしょうか?
先生:そうですね。自筆証書遺言では、紛失や改ざんのリスクがありますが、デジタル遺言であれば、クラウド上で遺言を保管するため、ブロックチェーン技術で改ざんを防止することができます。
生徒:デジタル技術の信頼性が問題となりそうですね。
先生:自筆証書遺言も、相続人に発見されなかったり、紛失や改ざんで相続争いになったりすることがありますから、デジタル技術の活用によって自筆証書遺言と同程度の信頼性を確保するなら、デジタル遺言のほうがよいでしょう。
生徒:高齢者のなかにはインターネットが苦手な人もいると思いますが、その点はどうするのでしょうか。
先生:その点は課題もありますね。ただ、インターネットを利用できる人にとっては、非常に操作は簡単になるでしょう。インターネット上でフォーマットに沿って入力するスタイルになると思われますので、遺言の書き方がわからない人でも、形式に従えばスムーズに遺言書作成ができるようになるでしょう。
生徒:外国でも遺言書のデジタル化は進んでいるのでしょうか?
先生:はい。紙以外の遺言制度の整備が進んでいます。アメリカでは、2人以上の証人の前で電子署名すればデジタルでの遺言書を認める、「電子遺言書」の制度があります。韓国では、録音による遺言が認められています。
遺言書の紛失や改ざんを回避する「自筆証書遺言保管制度」
生徒:どうしてもインターネットが苦手な人や、すでに自分で自筆証書遺言を作成済みの人が活用できる方法はありますか?
先生:「自筆証書遺言保管制度」があります。これは、自分で作成した遺言書を法務局で保管してもらえる制度です。これを使うことで、遺言書を紛失したり、改ざんされたり、隠されたりする恐れがなくなります。また、法務局の窓口で遺言書の形式を確認してくれるから、遺言書の書き方を間違えて無効になってしまうことを防ぐことができます。
生徒:それは安心ですね。
先生:また、通常の自筆証書遺言では、相続が発生したときに家庭裁判所の検認が必要ですが、この自筆証書遺言保管制度を使えば、検認が不要となります。
生徒:法務局に保管されていることを相続人が知らない場合はどうするのでしょうか?
先生:法務局に自筆証書遺言を保管してあると、相続が発生したときに、法務局から相続人へ通知が送られます。相続人は、全国の法務局の窓口で遺言書を閲覧できて、証明書を発行してもらえます。この証明書があれば、不動産の相続登記を行ったり、銀行預金の解約手続きを行ったりすることができるようになります。
生徒:法務局で保管してもらうための費用はいくらでしょうか。
先生:1通につき3,900円です。
生徒:安い! 証明書を使った相続手続きができるようになれば便利ですね。遺言書だけでなく、戸籍謄本などの書類もデジタル化されて、相続手続きが一層簡単になればいいですね!
先生:現在、デジタル庁では、法定相続人の特定に係る遺族の負担を軽減させるための制度改正を検討しています。法務省でも、相続手続きで戸籍謄本や戸籍抄本の添付を省略できるように、戸籍情報連携システムを整備していて、それが令和6年から稼動する予定だと言われています。
生徒:さらに便利になることを期待したいです。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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