退職金の「社会保険控除」は、受け取り方で変わってくる
生徒:先生、うちの主人も定年退職が近づいてきました。退職金について教えていただけますか?
先生:退職金がもらえるのはありがたいですね! 退職金は老後資金になって、年金の不足額を補填できます。退職金に課される税金について知っておきましょう。
生徒:「退職所得控除」や「2分の1課税」「分離課税」によって、退職金に課される税金が安くなることはわかったのですが、退職金から「社会保険料」も取られるのでしょうか?
先生:退職金の受け取り方ですが、「一時金として一括で受け取る」「年金として分割で受け取る」あるいは「これらを併用して受け取る」方法のいずれかを選択することになります。退職金を一時金として一括で受け取った場合には、社会保険料は控除されません。
生徒:では、年金として分割で受け取った場合はどうでしょうか?
先生:年金として分割して受け取った場合や、退職金前払い制度などを使って退職金相当額の全部または一部を給与に上乗せして在職中に受け取った場合には、通常の標準報酬月額の考え方に基づいて社会保険料が控除されます。
生徒:退職金を年金で受け取ると社会保険料が取られてしまうのですね!
退職したあとの「社会保険」はどうすれば?
生徒:会社員の間は、健康保険の手続きや保険料の納付を会社が代行してくれましたが、退職したあとの社会保険はどうすればよいのでしょうか?
先生:退職時に60歳を超えていれば、国民年金などの年金制度への加入手続きは必要ありませんが、60歳未満の場合は、国民年金への切り替え手続きが必要です。また、奥様が60歳未満で、これまでご主人の扶養に入って国民年金の第3号被保険者だった場合には、奥様ご自身で国民年金の第1号被保険者への切り替え手続きが必要となります。近くの年金事務所で加入手続きを行いましょう。
生徒:年金の保険料は60歳で終了なのですね。
退職後の健康保険…「国民健康保険」を選ぶ前に確認すべきこと
生徒:では先生、健康保険はどうでしょうか。
先生:健康保険では事情が異なります。退職すると、一般的に、住んでいる市区町村の国民健康保険に加入する必要があります。また、任意継続被保険者となり、それまで加入していた健康保険に2年間だけ継続して加入し続けることもできます。ただし、保険料は会社と折半ではなく、全額が自己負担となります。
生徒:それでは、国民健康保険のほうがよさそうですね…。
先生:しかし、国民健康保険としても、前年度の所得額で保険料が決まるので、退職した翌年は会社員時代の収入をもとに計算された高い保険料となるので、注意が必要です。健康保険については、再就職するかしないかにかかわらず、どのような立場であっても、いずれかの健康保険制度に加入しなければなりません。
生徒:75歳以降は「後期高齢者医療制度」に加入することになりますが、この制度の保険料はどうなるのでしょうか?
先生:75歳以上の後期高齢者は、それまで加入していた国民健康保険から「後期高齢者医療制度」に自動的に切り替えられます。特別な手続きは必要ありません。自己負担割合は所得水準に応じて変わり、現役並み、つまり課税所得が145万円以上の方は3割、年金収入その他所得の合計が単身で200万以上、2人以上で320万円以上の方は2割、それ以外の方は1割となります。保険料は所得に対して10%の所得割に均等割の約4万円を足した金額です。平均的には、年間で約9万円、毎月7,000円くらいでしょう。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
★退職金と退職後の社会保険料についてはこちらをチェック!
【退職金と社会保険料】退職金から保険料は取られるか?退職後の社会保険の手続きや保険料まで解説
★退職金を倍増させる節税方法・運用ついてはこちらをチェック
【退職金の受け取り方と節税】一時金の退職所得と年金の雑所得はどちらが正解なのか?