21年前の平均給与、461万円…まったく上がらない厳しい現実
生徒:以前、インターネットで「2021年の日本人の平均給与が443万円」という記事を見ましたが、本当でしょうか?
先生:本当です。国税庁の『令和3年分 民間給与実態統計調査結果』からの情報で、2020年度は433万円だったので、1年で10万円上がったということになります。しかし、21年前の2000年の平均給与は461万円。つまり、日本人の給与水準は全然上がっていないのです。
生徒:しかし、それは給与だけの話であり、年金や資産所得も含めたら、もっと高いのではないですか?
先生:その点については厚生労働省の『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』にデータがあります。それによると、2021年の1世帯あたり平均所得金額は「全世帯」で545万7,000円、「高齢者世帯」は318万3,000円、「高齢者世帯以外」は665万円、そして児童のいる世帯が785万円でした。
生徒:資産所得まで含めると、平均所得は意外と高いのですね。しかし、すべての人がそのくらいもらっている…というわけではありませんね?
先生:その通りです。これらはあくまで「平均値」で、実際の所得分布を見るとまた違った様子が見えてきます。たとえば、所得金額階級別に世帯数の相対度数分布を見ると、「200~300万円未満」が14.6%、「100~200万円未満」が13.0%、「300~400万円未満」が12.7%となっていて、所得300万円未満の世帯が最も多くなっています。
生徒:なるほど。だから、所得を低いものから高いものへと順に並べ、ちょうど半分になる「中央値」を見ることが大事なのですね。
令和3年度の給与の中央値は423万円、前年から「17万円減少」
先生:その中央値ですが、令和3年度で423万円でした。ちなみに、令和2年度は440万円だったので、1年で17万円減少したということになります。
生徒:しかし、平均所得金額が545万7,000円なのに、その金額以下の人が61.6%もいるとは変な話ですね。どういうことでしょう?
先生:過半数の人々が平均所得を下回るお金しか稼ぐことができない、ということです。そのため、一部の高額所得者が平均値を引き上げていることになります。
生徒:なるほど。だから「平均給与が443万円」という話題になるたび、「443万円なんてもらってない!」とネットで騒がれるのですね。
先生:そういうことです。その実感のギャップは、人々の生活意識にも現れています。この調査では「大変苦しい」「やや苦しい」「普通」「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」の5択から選んでもらっていますが、「大変苦しい」「やや苦しい」と答えた人が全体の50%を超えていました。
半分以上の人が生活に苦労している
生徒:つまり、半分以上の人が生活に苦労している、ということですか?
先生:その通りです。一方で、「大変ゆとりがある」と答えた人の割合は増え続けています。さらに、2022年度の総務省の家計調査を見ると、年齢別の世帯の貯蓄額も明らかになっています。たとえば、「30歳~39歳」は858万円、「40歳~49歳」は1,160万円、「50歳~59歳」は1,828万円、「60歳~69歳」は2,458万円、70歳以上は2,411万円となっています。
生徒:高齢になると貯蓄額が増えるのですね。それは「老後2,000万円問題」とどのような関連があるのですか?
先生:老後2,000万円問題というのは、老後資金として2,000万円以上必要となるという話です。ただし、60歳以上の方の貯蓄額を見れば、2,000万円を超えていることがわかります。けれども今後は、社会保険料も上がり、年金支給額も減っていくことでしょう。苦しい生活を抜け出して穏やかな老後を過ごせたらいいのですが、若い世代の人たちに待っているのは厳しい老後生活かもしれません。
生徒:私もNISAで投資に励むことにします。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
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