2023年内に「現行NISA」を始める人が増加…そのメリットと注意点は?
金融庁が9月22日に公表したNISA口座の利用状況調査の結果によると、2023年6月末時点で現行NISAの「一般NISA」「つみたてNISA」あわせて1,941万4,261口座で、2022年12月末時点と比べて7.8%増加しています([図表3]参照)。現行NISAを始める人が2023年前半で急増していることがわかります。
◆2023年に現行NISAを始めるメリット
では、2024年1月からの新NISAの開始を待たずに今のうちから現行NISAを始めるメリットはどこにあるのでしょうか。それは、現行NISAの非課税枠を、新NISAの非課税枠と別枠として扱ってもらえるという点にあります。
すなわち、まず、現行NISAのうち「つみたてNISA」は非課税保有期間が20年となっています。したがって、2023年に「つみたてNISA」を始めたら、2023年に投資した分は、2042年までの運用益が非課税になります(2043年以降は課税口座(特定口座または一般口座)に移管され、以降の運用益には課税されます)。
次に、「一般NISA」は非課税保有期間が5年となっているので、2023年中に一般NISA口座を開設して投資した分については、2027年までの運用益が非課税になります(2028年以降は課税口座に移管され、以降の運用益には課税されます)。
2023年に加入した場合、つみたてNISAは最大40万円、一般NISAは最大120万円の非課税枠を、新NISAと別に活用でき、その分、新NISA施行まで待つより非課税枠が増えるというわけです。
◆非課税保有期間終了時に「マイナス」だったら損することも
ただし、非課税枠が増えるとはいっても、必ず得をするというわけではありません。場合によっては損をしてしまうリスクもあることに、注意する必要があります。
損をする可能性があるケースは、現行NISAの非課税保有期間(「つみたてNISA」は20年、「一般NISA」は5年)が終了したときに、その時点での時価が投資額を下回り、マイナスが生じていた場合です。
たとえば、「一般NISA」を2023年に始めて、120万円をある上場企業の株式に投資したとします。非課税保有期間が終了する2027年12月末時点でその会社の株価が100万円に下落していた場合、課税口座へと移管されます。
その時点で、課税口座で新たに100万円を投資したとみなされることになります。そして、たとえばその後に20万円の運用益が生じたら、その20万円に対し20.315%の税金が課税されてしまうのです。
なお、この点は、「つみたてNISA」に関してはあまり気にする必要がないかもしれません。なぜなら、「つみたてNISA」で投資信託に投資して20年後まで運用した場合、投資額より増えている可能性が高いからです。本記事の主題から離れるので詳細には立ち入りませんが、「つみたてNISA」の対象となる投資信託は、長期間コツコツと積み立て投資をすれば、着実にお金を増やすことができる可能性が高いものに限られているのです。
しかし、「一般NISA」の場合、非課税保有期間が5年と比較的短いので、非課税保有期間終了時に損失が発生している可能性は十分に考えられます。また、個別の株式に投資する場合は、その株式の値動きと心中することになります。したがって、「一般NISA」を始めるのであれば、場合によっては、あえて非課税保有期間が終了する前に、利益が出ている段階で売却する可能性(その場合の売却益は非課税になる)も考慮に入れるべきといえます。
このように、新NISAが始まる前に現行NISAを始めておくことは、非課税で投資できる枠が広がるという意味ではメリットがあります。しかし、特に「一般NISA」で投資する場合には、かえって損をしてしまうリスクも少なからずあるということと、場合によっては非課税保有期間の途中で売却したほうがよいことに、留意しておく必要があります。
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ 共同代表
公認会計士
税理士
不動産オーナーなら知っておきたい
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