<前回の記事>少年王ツタンカーメン(享年19)、ホルモン異常で“女性化”していた…教科書に載らない「王家の話」
王族は近親婚ばかりだが…さすがに「祖父×孫娘」は嫌だった
もなか:「アイだ。アンケセナーメンの父方で見ると大おじ、母方で見ると実の祖父だ(図表1)。」
みるく:「おいこらジジイ―――――!!」
もなか:「ジジイ言うな。しかし、この話は有名だけど実は根拠が薄いんだ。アイがアンケセナーメンとの結婚を狙った証拠とされているのは、2人の名が刻まれた指輪の受け座がただ1つあるだけ。」
みるく:「古代エジプトといえど、さすがに実の孫娘との結婚は尋常じゃなさそうだもんね!」
アンケセナーメンの画策
もなか:「アイは長年、臣下としてファラオに仕えていた。跡継ぎのいないツタンカーメンが生前、身内の中で年長のアイを王位継承者に選んだという見方もある。ただ、わかっているのはアンケセナーメンが王妃の地位を手放したくなかったということだ。」
みるく:「王妃の地位を?」
もなか:「そう。彼女がヒッタイト王国のスッピルリウマ1世に宛てた手紙が残っている。」
みるく:「すっぴるりうま!」
アンケセナーメン:『私の夫は亡くなりました。息子はいません。しかし、あなたには王子が大勢いらっしゃると聞きます。王子の中から1人を私にいただけたら、その方を夫にしたいと思います。』
みるく:「夫に!?」
アンケセナーメン:『私は臣下から夫を選ぶつもりはありません。』
みるく:「臣下ってもしかしてアイのこと?」
もなか:「わからないが、だとすると実際にアイと結婚話があったようにも思えるね。」
アンケセナーメン:『王子が私の夫となり、エジプトの王となるのです。』
もなか:「つまり、アンケセナーメンはヒッタイトの王子と結婚し、夫はファラオとなり、自分は王妃となるつもりだったんだ。」
みるく:「なるほど、そうすればアイと結婚しなくても王妃でいられるもんね。」
もなか:「エジプトの王女は近親婚ばかりというのは有名だったから、スッピルリウマ1世は疑っていた。しかし、王子をファラオにできるというのは魅力的な話なので、やがて承諾した。そして息子の1人、ツァナンツァ王子が送り出されたよ。」
もなか:「しかし、王子はエジプト国境で何者かに待ち伏せされ、殺されてしまう。」
みるく:「おおおお―――い!!」
もなか:「ツァナンツァ王子にファラオの座を奪われないよう、アイが仕組んだといわれている。」
みるく:「アイめ――!!」
もなか:「このせいでエジプトとヒッタイト王国の関係は悪化した。そして、結局アイとアンケセナーメンは結婚したと言われる。」
みるく:「いやあああアンケセナーメンちゃ――ん!!」
もなか:「だが実際のところ、ヒッタイトへ手紙を送って以降のアンケセナーメンの記録は残っていないんだ。もし、アイがツタンカーメンから後継者に指名されていたのなら、アンケセナーメンと結婚する必要はないだろう。アンケセナーメンは後宮へ退いたのか、あるいは…。」
みるく:「え?」
もなか:「アイの王位を脅かしたとして処罰を受けた可能性もあるという。幽閉か、処刑か…。」
みるく:「いやああ!!」
もなか:「彼女が天寿を全うできたことを願うしかない。」
みるく:「うぅ、無事でいてねアンケセナーメンちゃん。」