マルサの強制調査…長ければ1案件「2年以上の調査」も
マルサは強制調査によって脱税額を確定し、検察官に告発して刑事罰を問うための組織だ。脱税額が量刑を左右するため、脱税の証拠を集めて1円単位まで正確に確定しなければならない。そのため、長いときには2年以上の日数をかけて調査を行うケースもあり、一般的な税務調査とは比較にならない。
法人税法や所得税法には個別に罰則規定が定められているが、すべて刑罰を科している。よって、本来、租税犯の捜査は刑事訴訟法の規定に従って、検察官などの捜査機関が捜査をし、裁判で審理すべきものだろう。
しかし、国税犯則事件の調査には税法の専門的知識が必要で、証拠収集にも特別な経験と知識が必要なことから、日ごろ国税の調査を行い、課税物件や納税義務者に接触している税務職員にあたらせたほうが効率的であるため、査察制度が設けられている。
「ストックオプション事件」と脱税の意図
量刑は犯罪行為の意図によって大きく変わる。たとえば人を死に至らせた場合、殺すつもりだったのか、そうではなかったのかによって量刑が違ってくるのと同様、マルサでも「脱税の意図」が大きな問題になる。
この問題を表面化させたのが「クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件」だ。
2008年11月、国税局はクレディ・スイス証券の従業員などに一斉税務調査を行った。対象者は約300人にのぼったが、そのほとんどがストックオプションで受け取った海外給与を申告していなかったことが判明したのだ。
マルサはそのうちのたったひとりに対し、2年間に給与の一部として得た株式報酬などを申告せず、約1億3,200万円を脱税したとして強制調査をかけたのだが、対象者は「源泉徴収されていると思っていた」と脱税の意図を否認した。
その後、地検特捜部が在宅起訴して法廷闘争が続き、東京地裁は「脱税の意図はなかった」とする主張を認めて無罪判決を言い渡した。続く東京高裁も無罪判決。東京高検が上告をあきらめたため無罪が確定した。
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