定年退職後には重すぎた「月16万8,000円」のローン返済
60歳で定年退職を迎えたばかりの相沢誠さん(仮名)。3歳下の妻・恵子さんの2人が住宅を購入したのは、いまから25年前。誠さんが35歳のときでした。美しい自然に囲まれた暮らしにあこがれていた相沢さん夫婦は、東京郊外に、5,800万円で庭付きの新築戸建てを購入したのでした。
2人は後に3人の子をもうけ、家族5人で多くの幸せを積み重ねてきました。
しかし、誠さんの定年退職を機に、長く続いた幸せな日々にもかげりがみえ始めます。
誠さんが60歳になり、雇用形態は嘱託社員に。それに伴い、給料は58万円→35万円へと約4割減となりました。
幸いにして3人の子どもはすでに独立しているため生活費は2人分で済みますが、住宅ローンはまだまだ残っています。さらに、現役時代の3人の子どもたちの教育費負担が非常に大きかったことから、貯金をあまり積み立てられていなかったことも夫婦の不安のタネになっています。
誠さんのキャリアの終わりが訪れると同時に、経済的な安定感は失われ、不安が顕在化します。2人は決して多くはない貯金を切り崩しながら節約生活へと突入したのでした。
日々の生活費に加え、住宅ローンの返済は月16万8,000円。2人は贅沢を削り、予算を厳格に守り、全力を尽くしましたが、医療費をはじめとした予期せぬ出費が相次ぎ、困難な状況からは抜け出せません。
友人たちにもアドバイスを仰ぎ、新たな収入源をみつけるために奔走しました。しかし、60歳を過ぎた誠さんが新しく高収入な仕事に就くのは厳しいのが現実でした。
2人は希望を捨てずになんとか踏ん張ってきましたが、最終的には、住宅ローンをあと12年間も返済し続けることは不可能だという現実を受け入れざるを得ませんでした。
インターネットで「住宅ローン返済できない」「定年退職後住宅ローン返済する方法」「住宅ローン滞納しても住み続ける方法」などと検索すると、競売や破産等の文字が目につき、調べれば調べるほど、不安は募る一方でした。
銀行や不動産業者、弁護士事務所にも相談を持ちかけましたが、問題は解決しないどころか、2人の不安はますます募るばかり。
銀行で毎月の返済額を減額する方法を相談しても、「約定通りに返済を続けてください」としかいわれず。不動産業者からは任意売却や競売を勧められ、弁護士事務所では、「破産しかないのでは?」といわれました。
2人は、絶望の淵に立たされました。
そして、いよいよ今月末の住宅ローン返済に充てる資金がないという現実に直面したとき、とうとう誠さんは消費者金融に手を出してしまいます。月末のローン返済資金16万8,000円を借入で賄おうとしたのです。いったん消費者金融に手を出してしまうと、その翌月も、翌々月も同じことを繰り返してしまいました。
ついには、消費者金融の借入可能額いっぱいまで借り切ってしまい、これ以上どこからも新規で借入をすることができない事態に。いよいよ首が回らなくなってしまいました。