(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省が9月13日に公表した2021年度の「介護保険事業状況報告(年報)」によると、要介護認定・要支援認定を受けている65歳以上の人の数は2021年末時点で約676.6万人でした。2025年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になります。そんななかで、今後、介護と仕事を両立するための公的な制度が重要になっていくとみられます。本記事ではそれらの制度について解説します。

制度はあるが利用率わずか0.06%

家族の介護が必要となった場合、日本には、仕事を続けながら介護を行うための「休業と給付金」の制度が2つ設けられています。

 

・介護休業と介護休業給付金

・介護休暇(有給または無給)

 

いずれも法律上の制度です。つまり、勤務先がこれらの制度を置いているかどうかにかかわらず、労働者から希望したら取得できるものです。勤務先は拒否できません。また、これらの制度を利用したことを理由として、不利益な扱いをすることも禁じられています。

 

しかし、これらの制度の利用率はきわめて低くなっています。厚生労働省「令和4年(2022年)度雇用均等基本調査」の結果によると、2021年4月1日~2022年3月31日の間に、常用労働者のうち介護休業を取得した労働者の割合は0.06%にとどまっています。

 

なお、その0.06%のうち女性は69.2%、男性は30.8%でした。介護の負担が女性に偏っていることがうかがわれます。

 

たとえば、「親の介護のために仕事を休みたい」と思っても、なかなか休業できないという実態がうかがわれます。「介護離職」などという言葉もあります。今後、高齢化社会が進行するにあたって、取得率の向上が重大な課題となっていくことが想定されます。

 

以上を前提に、各制度について概説します。

「介護休業」と「介護休業給付金」

まず、介護のため仕事を休むことができる制度は、「介護休業」です。そして、その間の収入を確保できるのが「介護休業給付金」です。

 

介護休業は、家族1人につき93日を限度に、合計3回まで受給することができます。この「93日・計3回まで」というのは、介護に関する長期的方針を決めるために必要な期間を想定したものです。

 

介護休業を取得する間、「介護休業給付金」を受給することができます。金額は給与の67%(約3分の2)です。手取り額がカバーされるイメージです。

 

◆制度を利用するための資格

介護休業と介護休業給付金の制度は、正社員も非正規雇用の労働者(パート、アルバイト、派遣社員等)も利用できます。ただし、以下の通り、資格の条件に違いがあります。

 

【介護休業給付金を受給できる資格】

・正社員:引き続き雇用された期間が1年以上

・非正規雇用の労働者:労働契約の期間が、介護休業開始予定日から93日経過日から6ヵ月後までに満了することが明らかでない

 

◆介護休業を取得するための要件

介護休業を取得するための要件は以下の2つです。

 

【介護休業の取得要件】

1. 常時介護を2週間以上必要とする状態にある家族(配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護するための休業であること

2. 期間の「初日」と「末日」を明らかにして事業者に申し出を行うこと

 

まず、家族が「常時介護を2週間以上必要とする状態」にあれば取得できます。自分自身が実際に2週間休業する必要はありません。たとえば、複数人で協力し合ってそれぞれ2週間未満の休業を取得するようなことも可能です。

 

次に、「常時介護を必要とする状態」は、以下のいずれかをさします。

 

【常時介護を必要とする状態】

・要介護2以上の認定を受けている

・【図表1】の状態(1)~(12)のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続している

 

厚生労働省HPより
【図表1】常時介護を必要とする状態の判断基準 厚生労働省HPに掲載されている表をもとに作成

 

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