歯止めがかからない少子化…現在の少子化対策は「3タイプ」
厚生労働省が9月15日に発表した2022年の人口動態統計(確定値)によると、同年の出生数は77万759人と、統計上初めて80万人を下回りました。また、女性1人当たりの生涯で産む子の数を示す合計特殊出生率は1.26と過去最低を記録しました。少子化に歯止めがかからない実態が改めて浮き彫りになっています。
しかし、政府は少子化に対し、決して手をこまねいてきたわけではありません。様々な出産・子育てをサポートする制度があります。また、それらを拡充する動きもあります。本記事では、日本の出産・子育てをサポートする制度について、大きく以下の3つのタイプに分けて紹介します。
1. お金を受け取れる制度
2. 育児休業の制度
3. 税制優遇の制度
お金を受け取れる制度
まず、出産・子育てにかかる費用をサポートしてくれる公的制度を紹介します。以下の6つです。
【お金を受け取れる制度】
1. 出産育児一時金
2. 出産・子育て応援給付金
3. 出産手当金
4. 育児休業給付金
5. 児童手当
6. 高等学校就学支援制度(高校等の授業料の実質無償化)
◆1. 出産育児一時金
女性が出産した場合に、子ども1人につき50万円を受け取れる制度です。会社員・公務員が加入する「被用者保険」、個人事業主等が加入する「国民健康保険」に基づく制度です。国民全員が何らかの形で健康保険制度に加入している日本では、出産したすべての女性が受給できます。所得制限はありません。
なお、2023年3月以前は42万円でしたが、出産費用の増加に対応するため、2023年4月から50万円へと引き上げられています。
◆2. 出産・子育て応援給付金
「妊娠届出」を行う際と「出生届出」を行う際に、それぞれ5万円相当(合計10万円)の子育てに関するクーポン等を受給できる制度です。支給の形態は個々の市町村に委ねられており、現金の支給を行う自治体もあります。所得制限はありません。
財源は国が3分の2、都道府県と市区町村が6分の1ずつを負担します。
◆3. 出産手当金
会社員・公務員の女性が産前・産後の休業(後述)を取得し、その間の給与が勤務先から支払われなかった場合に、給与額の67%を受け取れます。「被用者保険」に特有の制度です。
所得制限は設けられていません。
◆4. 育児休業給付金
会社員・公務員が育児休業を取得した場合に、「雇用保険」から給与額の67%を受け取れる制度です。所得制限はありません。また、受給している間は社会保険料の納付義務を負いません。
なお、政府は2023年3月に、受給額を給与額の80%にまで引き上げる方針を表明しましたが、実際の引き上げの時期は決まっていません。
◆5. 児童手当
中学校3年生以下の子どもを養育している人が、子ども1人あたり月1万円~1万5,000円を受給できる制度です([図表1]参照、特例給付を除く)。この制度は所得制限があり、現在、政府がその見直しを進めています。また、給付対象年齢を高校生までにすることも検討されています。
現行の所得制限は「所得制限限度額」と「所得制限上限額」の2段階になっています。それぞれの意味は以下の通りです([図表2]参照)。
【「所得制限限度額」と「所得制限上限額」】
・所得制限限度額:超過すると一律月5,000円になる(特例給付)
・所得制限上限額:超過すると児童手当の対象外になる
◆6. 高等学校就学支援制度(高校等の授業料の実質無償化)
公立、私立を問わず、高校等の授業料を実質的に無償化するものです。2020年4月から施行されました。学校の種類ごとの上限額は以下の通りです。
【学校の種類ごとの上限額】
・公立高校:年11万8,800円
・国公立の高等専門学校(1~3年):年23万4,600円
・私立高校(全日制):年39万6,000円
・私立高校(通信制):年29万7,000円
それに加え、所得制限が設けられています。まず、両親の収入の合計額について、以下の計算式で導き出された額が30万4,200円未満におさまっている必要があります。
次に、この計算式で算出された額に応じ、受給できる上限額が以下の通り決まっています([図表3]参照)。
・15万4,500円未満:年39万6,000円
・15万4,500円~30万4,200円未満:年11万8,800円
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