バブル崩壊後、日本に定着した「低所得・低物価・低金利・低成長」。『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』著者で第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、この「4低」が定着してしまった原因について「放置すると取り返しのつかないことになる」と警告します。日本はどうすれば「4低」から抜け出すことができるのか、みていきましょう。
デフレを放置すると、取り返しのつかないことになる
海外の国々がここまで「日本化」を恐れるのは、30年間デフレを放置するとどうなるか、実際に日本の状況を目の当たりにしているからです。
不況になると自殺者が増えます。日本では1998年に年間自殺者数が3万人を超え、以後は減りつつあるものの、なお2万人を上回る高い水準のままです。自殺率で見ても、人口10万人あたり15.3人と、日本はG7諸国中トップです。
さらに低所得や将来不安の影響か、結婚しない若者が増えており、出生数もほぼ毎年下がり続けています。2000年に119万547人だった出生数は、2020年には84万835人に減少しています。これは1899年の調査開始以来、最少の出生数でした。
不況によって、人口にまで大きな影響がおよんでいる……こう考えると長期化したデフレの恐ろしさがわかるでしょう。
永濱 利廣
第一生命経済研究所
首席エコノミスト
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
第一生命経済研究所
首席エコノミスト
1971年、群馬県生まれ。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。
1995年に第一生命保険入社、日本経済研究センターを経て、2016年より現職。衆議院調査局内閣調査室客員調査員、総務省「消費統計研究会」委員、景気循環学会常務理事、跡見学園女子大学非常勤講師。2015年、景気循環学会中原奨励賞を受賞。
「30年ぶり賃上げでも増えなかったロスジェネ賃金~今年の賃上げ効果は中小企業よりロスジェネへの波及が重要~」など、就職氷河期に関する発信を多数行う。著書に『「エブリシング・バブル」リスクの深層日本経済復活のシナリオ』(共著・講談社現代新書)、『経済危機はいつまで続くか――コロナ・ショックに揺れる世界と日本』(平凡社新書)、『日本病なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)など多数。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載第一生命経済研究所の「首席エコノミスト」が語る…日本の給料と物価が“一向に上がらない”ワケ