※画像はイメージです/PIXTA

『国税最後の砦』と呼ばれる国税局査察部(通称:マルサ)。その実態はベールに包まれており、テレビや新聞、書籍などではさまざまな憶測が飛び交っています。しかし、“元マルサの税理士兼僧侶”という異色の経歴を持つ上田二郎氏は、「まったくの見当違いや正確性を欠く記事も少なくない」といいます。そこで、上田氏がこれまでの実体験をもとに「マルサの実態」を暴露します。

“元・マルサ”の筆者だから語れる「マルサの実像」

ある朝、国税局に出勤すると、隣の班が全員集まって何事かを統括官と相談していた。重大な事件が起こったことは、その雰囲気から十分に伝わってくる。何かあったことは間違いない。

 

しばらくして自席に戻った亀井査察官に「何かあったの」と、こっそり聞いた。

 

亀井査察官「ターゲットの店が、今朝、燃えちゃったんだよね」

筆者「今、どの辺を追っていたんだっけ?」

亀井査察官「歌舞伎町」

 

2001年9月に起きた「歌舞伎町ビル火災」は死者44名が出た大惨事だ。界隈では有名な風俗店が入る雑居ビルで発生した火災。どこを張り込んでいたとは言えないが、亀井査察官はビルの「ある店」を張り込んでいた。

 

ところが話はこれで終わらない。この深夜1時の現場をライブで見ていた査察官が他にもたくさんいた。現場にいた全員が内偵中だったのか飲みすぎて終電を逃したのかは分からないが、マルサの活動の一端を垣間見れる一例だ。

 

『国税最後の砦』と呼ばれるマルサだが、その実態はベールに包まれている。時折、脱税事件が小さな新聞記事で報じられる程度なのだが、2019年、関西電力の役員ら20人が、高浜原発がある福井県高浜町の元助役から約3億2,000万円分もの金品を受け取っていたことが判明し、一躍脚光を浴びる。原発利権に切り込んでいったのがマルサだ。

 

ところで、「マルサは大企業の強制調査はしない」や「強制調査に入る基準は不正申告1億円」などといった都市伝説があるようだが、経験のない者が書いた記事は、まったくの見当違いや正確性を欠く。

 

そもそも任意調査と強制調査はどう違うのか。守秘義務があってすべてを明らかにすることはできないが、読者にできるだけわかりやすくマルサの実像を伝えたいとの思いから“マルサを”徹底解剖する。

 

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