家賃月4,000円の団地に住み、バス代260円も払えず…壮絶過去を持つ「安室奈美恵」に学ぶ「貧しさの壁」の乗り越え方

家賃月4,000円の団地に住み、バス代260円も払えず…壮絶過去を持つ「安室奈美恵」に学ぶ「貧しさの壁」の乗り越え方
(※写真はイメージです/PIXTA)

生まれが貧しくても「貧しさの壁」を乗り越え成功者となる人と、乗り越えられない人にはどんな違いがあるのでしょうか。本記事では石井光太氏の著書『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』(文藝春秋)より、同氏が17歳の若者にもわかりやすく、日本の貧困の実態について語りかけます。

貧困対策の最優先は「心のレベルアップ」

行政も心のレベルアップを実現できる場をいろんなところに用意しようとしている。最近では「居場所」と呼ばれているところがそれだ。子供たちが社会から孤立するのを防ぎ、大勢の大人や同級生がかかわることで、精神面で子供たちを支え、自己否定感を生み出す要素を排除し、健全な心を育てていこうという試みだ。

 

僕は心のレベルアップこそが、貧困対策で優先すべき課題だと考えている。

 

今の学校には、成績アップこそが優先するべき課題だという認識がある。でも、世の中には中卒、高卒の人は一定数いるものだ。もともと計算や暗記が得意じゃない人もいれば、勉強よりスポーツに力を入れたいと思う人もいる。家庭の問題で進学をあきらめる人だっているだろう。全員が優秀な成績をとって一流大学に入るなんて現実的にはありえないことだ。

 

ならば、勉強する機会を与えて一流大学進学を目指すより、もっとその子に寄り添ったところで好きなこと、得意なことをしてもらって、心のレベルアップを目指すべきじゃないだろうか。

 

心のレベルアップを実現できれば、その人は社会で自信をもって生きていくことができるようになる。目の前にどんな問題が立ちふさがろうとも、予期せぬことが降りかかろうとも、それを乗り越えて前に進んでいくことができるようになるんだ。

 

貧困の壁を乗り越えた…歌手・安室奈美恵

これを体現した中卒の有名人といえば、歌手の安室奈美恵さんがあげられるだろう。

 

沖縄で生まれた安室さんは、保育園児の時に両親が離婚して、お母さんに女手一つで育てられた。お母さんは昼間は保育士さん、夜は水商売の店でホステスと二つの仕事をかけもちして働いて、安室さんを含む3人の子供たちを養った(平良恵美子『約束 わが娘・安室奈美恵へ』)。

 

生活は非常に苦しかったそうだ。離婚後間もなく、住んでいた家の家賃は月に5,000円で、窓さえない六畳一間だったという。次に移った団地も、家賃が月4,000円という格安物件だったというから、文字通りギリギリの生活だったのだろう。

 

それでも母親はめげなかった。夕方5時に仕事を抜け出して安室さんを保育園に取りに行き、今度は自分が働いている保育園へ連れていく。毎日帰りは深夜2時で、3時間くらい寝て6時には起きて1日の準備をはじめなければならなかった。

 

小学4年生の時、安室さんはたまたま友達と一緒に、沖縄アクターズスクールというタレント養成所へ行ってレッスンの見学をする。とはいっても、ここで学ぶにはそれなりのレッスン料がかかるため、安室さんにとって入学して歌手を目指すのは夢のまた夢だった。

 

しかし、運命の歯車がここで動き出す。沖縄アクターズスクールの社長さんが安室さんの才能に一目ぼれして、特待生として無料でレッスンを受けさせてくれることになった。安室さんはお母さんに相談したが、団地から沖縄アクターズスクールへ行くまでの往復のバス代260円を払うことはできないと言った。それでも安室さんはあきらめず、片道1時間半の距離をバス停を頼りに歩いて通うことにした。

 

安室さんは、沖縄アクターズスクールで練習をつんでいくうちに、歌やダンスの魅力に取り込まれていった。もともとは物静かな性格だったが、いざ音楽が流れはじめるとダイナミックに手足を動かし、誰よりも心に響く声で歌いあげる。その才能は一目瞭然だった。

 

安室奈美恵が「プロ歌手」という目標に向かってひたむきになれたワケ

やがて安室さんはプロの歌手になる夢を抱き、学校へ行かずに練習に没頭するようになった。同級生の一部は「そんなことをしたって歌手になれるわけがない」とあざ笑った。先生も、歌手を目指すより、勉強して高校へ進学するように言った。彼女はそれらには耳をかさず、目標に向かってひた走った。

 

彼女がそうできたのは、沖縄アクターズスクールの社長さんやスタッフの支えがあったからだ。彼らは安室さんが絶対に成功すると思って全力で教え、励ましてくれた。お母さんも努力を認めて応援してくれた。

 

お母さんはお金がまったくといっていいほどなかったのに、離婚した夫に頼んでお金を2万円だけ出してもらい、欲しがっていたエレキピアノを買ってあげたこともあった。安室さんは誕生日プレゼントさえほとんどもらった記憶がないので大喜びして毎日ずっとピアノを弾いていた。

 

こうした環境が彼女に自信を抱かせ、どんどん自己肯定感が育っていったのだろう。中学2年生の時、彼女はついに SUPER MONKEY'Sのメンバーとなりプロとしての活動をスタートさせることになる。

 

最初は鳴かず飛ばずで、スーパーマーケットのイベントでほとんどお客さんもいない中で歌ったり、子供番組に着ぐるみを着て出演するなどしていたが、歌手になることをあきらめずに努力を重ねられたのは、周りの人たちの支えと応援があったからに違いない。心のレベルアップを果たしていた彼女はあきらめることなく、夢に向かって走りつづけることができた。

 

そして17歳の時、ソロ活動に転じて大ヒットを飛ばしたことで、一躍ミュージックシーンのトップに上りつめることができたんだ。

 

彼女はこんなことを言っている。

 

「怖がらずに、思い切って一歩前に踏み出してみたら、人との出会いや、新しい自分の発見が待っていた。そこで得たものが、今の私をつくっているんです」

 

[図表1]心のレベルアップ

 

安室さんのエピソードからわかるのは、どれだけ貧しくても、周囲の人たちの支援を受けて心のレベルアップをつみ重ねていけば、目標がはっきりと見えるようになるし、それに向かって努力する力をつけることができるということだ。新たな出会いもある。それが、最終的には貧困の壁を乗り越えることにつながる。

 

注目のセミナー情報

【資産運用】5月8日(水)開催
米国株式投資に新たな選択肢
知られざる有望企業の発掘機会が多数存在
「USマイクロキャップ株式ファンド」の魅力

 

【国内不動産】5月16日(木)開催
東京23区×新築×RC造のデザイナーズマンションで
〈5.5%超の利回り・1億円超の売却益〉を実現
物件開発のプロが伝授する「土地選び」の極意

次ページCoCo壱番屋社長が“貧しい子供時代”から成功した理由

※本連載は、石井光太氏の著書『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』(文藝春秋)より一部を抜粋し、再編集したものです。

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

依頼者の争族を防ぐための ケーススタディ遺言・相続の法律実務

ぎょうせい

遺言・相続の現場で起こるトラブルへの解決策がケーススタディで理解できる! ○遺言・相続問題という身近なトラブルに対して弁護士がどのように関与していくのか、トラブル解決への糸口を44のケーススタディで解説! ○…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録