家賃月4,000円の団地に住み、バス代260円も払えず…壮絶過去を持つ「安室奈美恵」に学ぶ「貧しさの壁」の乗り越え方

家賃月4,000円の団地に住み、バス代260円も払えず…壮絶過去を持つ「安室奈美恵」に学ぶ「貧しさの壁」の乗り越え方
(※写真はイメージです/PIXTA)

生まれが貧しくても「貧しさの壁」を乗り越え成功者となる人と、乗り越えられない人にはどんな違いがあるのでしょうか。本記事では石井光太氏の著書『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』(文藝春秋)より、同氏が17歳の若者にもわかりやすく、日本の貧困の実態について語りかけます。

日本の社長の約4割は「中卒・高卒」

安室さんほどでないにしても、僕の知人の中でも中卒の人で成功している人はたくさんいる。建築会社で10年間トビの仕事をしてたくさんの資格をとって20代で独立した人、スーパーでアルバイトしていたところ勤勉さを買われて正社員になり支店長にまで昇進した人、料理人として修業をつんで30歳で自分の店を出した人……。

 

みんな貧困家庭で中学までしか出ていないけど、家庭以外の環境や制度をうまく生かして貧困から脱出した人たちだ。

 

これを裏付ける興味深いデータがある。東京商工リサーチが日本にいる130万人以上の社長の学歴を調べたところ、図表2のような数字が出た。

 

[図表2]社長の最終学歴

 

高卒
37.5パーセント

 

中卒
6.7パーセント

 

つまり、日本の社長さんの44.2パーセントが中卒か高卒なんだ。

 

もちろん、この中卒、高卒の人がみんな貧困家庭の出身というわけじゃないし、社長さんの年齢もバラバラだ。でも、中卒、高卒の人たちは大卒の人たちほど就職先に恵まれていないため、自ら起業して可能性を広げていく傾向にあるといえる。

 

貧困の壁を乗り越えた…CoCo壱番屋・社長

知ることで未来が変わる…
貧困の最前線
 

 

君たちがよく知っている会社の社長さんにも、そんな人がいる。カレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」の創業者である宗次徳二宗(むねつぐとくじ)(
さんだ。

 

宗次さんは両親のことさえ知らずに生まれ育った。物心ついた時には児童養護施設に預けられていて、3歳からは血のつながりのない宗次家の養子になった。

 

だが、宗次家はとても貧しかった。養父がギャンブルばかりして借金まみれになり、宗次さんを連れて夜逃げしたのだ。新しく移り住んだ土地でも同じような状態で、家の電気や水道が料金未払いで止められたり、引っ越しをくり返したりした。

 

宗次さんは空腹に耐えかね、雑草を食べてしのぐこともあった。養父はいつまで経ってもこりず、たびたび宗次さんをギャンブル場へ連れていった。宗次さんは養父に喜んでもらいたい一心で地面に落ちていたタバコの吸い殻を集めていた。養父はそんな宗次さんの気持ちを読み取ることなく、棒で殴りつけるなど暴力をふるっていた。

 

高校へ進学してから、宗次さんはアルバイトで家計を支えた。だが、家には息子を大学へ進学させるだけの余裕はなかった。宗次さんは、高校卒業後に不動産会社に就職することになった。

 

20代の半ばで、彼は不動産会社で知り合った奥さんと独立を決意する。これまで大変な人生を送ってきたので、なんとか自立して生きていきたいと思ったのかもしれない。2人でコツコツと喫茶店を経営し、やがてカレー屋を立ち上げる。そしてそれを全国チェーン店へと成長させたんだ。

自己肯定感のつみ上げが、人生の壁に立ち向かう力となる

ここで僕が言いたいのは、貧しい家庭で生まれようとも、学歴がなかろうとも、人は心のレベルアップを通して自信と意志をもつことができれば、どんなことでも成し遂げられるようになるということだ。

 

人生には困難がつきものだ。特に大変な境遇の中で生きている人は、それだけ多くの壁にぶつかることになるし、自暴自棄におちいりたくなることだってある。

 

でも、そんな時にくじけず、前を向いて進めるかどうかは、その人がどれだけ自己肯定感を育はぐくんできたかということにかかっているんだ。

 

ここまで記事を読んできた君は、安室奈美恵さんらの例からも、自己肯定感の重要さがわかるだろう。彼らが心のレベルアップをつみ重ねたように、君も理解者に囲まれながら同じことをしていけば、かならず社会に羽ばたいていくことができるようになる。

 

ただ、社会にはそれをはばむ、様々な落とし穴が待ち受けているのも事実だ。ひとまず、ここでは自己肯定感をつみ上げることが問題解決の重要な要素になることを覚えてもらいたい。

 

 

石井光太

作家

 

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※本連載は、石井光太氏の著書『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』(文藝春秋)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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