住商はいち早くEV電池のリユース
自動車ビジネス起点で蓄電池ビジネスを始めたのが住友商事だ。2010年に日産自動車と共同で「フォーアールエナジー」を設立。電気自動車(EV)の電池をリユースしている。出資比率は日産51%、住友商事49%だ。
EVの電池は満充電時の充電可能量が70%程度に消耗すると、交換される。EVで使用済みとはいえ、産業用途には使える。そこで、フォーアールエナジーで使用済みEV電池を回収後、性能を確認し、電池をパックに再構成して再利用する。
フォーアールエナジーの電池パックはこれまでに超小型EVやEV充電器での利用実績がある。今後は、より大きな容量の電池パックにまとめた「蓄電池ステーション」として、再エネの出力調整システムに組み込む方針だ。
出力調整とは何だろうか。
太陽光や風力は、天候によって発電量が変わる。また、電力システムは、需要と供給が同時に同じ量でなければならない。たとえば、晴れた春の日に太陽光で大量の電気を作っても、冷房需要がないので、電気を送電網に送ることはできず、「作り損」になってしまう。そこで、電力システムに蓄電池を組み込み、電力を作りすぎた日には貯める。逆に、雪の日で太陽光の発電が少なく、暖房需要が多いといった需給ひっ迫局面では、貯めた電気を放出する。
電池ステーションは、この再エネの需給調整役を担う。フォーアールエナジーは、2024年に北海道千歳市に23メガワット時の蓄電池ステーションを開設予定だ。北海道は陸上風力を中心に再エネ発電が盛んだが、送電網が少ないのが課題だった。電池ステーションはこの課題に対処する。
EV電池のリユースは近年ではホンダなども手掛けるが、日産・住友商事連合はいち早く参入した。日産がEV「リーフ」を投入したことも要因だが、住友商事が「クルマの電動化」というビジネスチャンスを逃さなかったことも大きい。
フォーアールエナジーは住友商事内ではもともと、自動車販売やリース、CASE(Connected=つながる、Autonomous=自動運転、Shared & Services=シェアリングとサービス、Electric=電動化)などを手掛けるモビリティ部門が担当していた。当初は、リユース電池の使途は、出力の小さい事例に限られていたが、今や蓄電池ステーションの運営にまで至った。社内でも注目の事業として、全社横断で脱炭素を進めるプロジェクトに育った。