日本企業が取り組む「再エネ市場」──伊藤忠、住友商事、豊田通商の〈役割と使命〉

日本企業が取り組む「再エネ市場」──伊藤忠、住友商事、豊田通商の〈役割と使命〉
画像:PIXTA

総合商社各社が畜電池を使ったビジネスを拡大している。伊藤忠商事は家庭用、住友商事は電気自動車の電池のリユースに参入、陸上風力発電向けの大型蓄電池システムを手掛ける豊田通商──。単なる電池の売り切りではなく、得意分野から参入し、自社の事業領域を広げるツールにも使っている。SDGsへの貢献が期待される蓄電池をテコにビジネス拡大を目指す商社の動きを、フリーライターの種市房子氏が解説する。本連載は、SDGsを実践する企業を支援するWebサービス「coki」からの抜粋転載です。

住商はいち早くEV電池のリユース

北海道千歳市で2024年に運用開始予定の蓄電池ステーション=住友商事提供
北海道千歳市で2024年に運用開始予定の蓄電池ステーション=住友商事提供

 

自動車ビジネス起点で蓄電池ビジネスを始めたのが住友商事だ。2010年に日産自動車と共同で「フォーアールエナジー」を設立。電気自動車(EV)の電池をリユースしている。出資比率は日産51%、住友商事49%だ。

 

EVの電池は満充電時の充電可能量が70%程度に消耗すると、交換される。EVで使用済みとはいえ、産業用途には使える。そこで、フォーアールエナジーで使用済みEV電池を回収後、性能を確認し、電池をパックに再構成して再利用する。

 

フォーアールエナジーの電池パックはこれまでに超小型EVやEV充電器での利用実績がある。今後は、より大きな容量の電池パックにまとめた「蓄電池ステーション」として、再エネの出力調整システムに組み込む方針だ。

 

出力調整とは何だろうか。

 

太陽光や風力は、天候によって発電量が変わる。また、電力システムは、需要と供給が同時に同じ量でなければならない。たとえば、晴れた春の日に太陽光で大量の電気を作っても、冷房需要がないので、電気を送電網に送ることはできず、「作り損」になってしまう。そこで、電力システムに蓄電池を組み込み、電力を作りすぎた日には貯める。逆に、雪の日で太陽光の発電が少なく、暖房需要が多いといった需給ひっ迫局面では、貯めた電気を放出する。

 

電池ステーションは、この再エネの需給調整役を担う。フォーアールエナジーは、2024年に北海道千歳市に23メガワット時の蓄電池ステーションを開設予定だ。北海道は陸上風力を中心に再エネ発電が盛んだが、送電網が少ないのが課題だった。電池ステーションはこの課題に対処する。

 

EV電池のリユースは近年ではホンダなども手掛けるが、日産・住友商事連合はいち早く参入した。日産がEV「リーフ」を投入したことも要因だが、住友商事が「クルマの電動化」というビジネスチャンスを逃さなかったことも大きい。

 

フォーアールエナジーは住友商事内ではもともと、自動車販売やリース、CASE(Connected=つながる、Autonomous=自動運転、Shared & Services=シェアリングとサービス、Electric=電動化)などを手掛けるモビリティ部門が担当していた。当初は、リユース電池の使途は、出力の小さい事例に限られていたが、今や蓄電池ステーションの運営にまで至った。社内でも注目の事業として、全社横断で脱炭素を進めるプロジェクトに育った。

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※本連載は、SDGsを実践する企業を支援するWebサービス「coki」からの抜粋転載です。

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