(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省が2023年8月29日に公表した「人口動態統計」の速報値によると、2023年上半期(1月~6月)の出生数が37万1,052人と過去最少を記録し、少子化に拍車がかかっている現状が明らかになりました。その要因の一つに「お金」の問題があるとみられます。そこで、本記事では、子育ての「お金」をサポートする制度と、少子化対策の課題について解説します。

出産・育児を支援する「給付」の制度

まず、出産・育児を支援する主な「給付」の制度を紹介します。以下の6つです。

 

1. 出産育児一時金

2. 出産・子育て応援給付金

3. 出産手当金

4. 育児休業給付金

5. 児童手当

6. 高校等の授業料の実質無償化(高等学校就学支援制度)

 

◆1. 出産育児一時金

「出産育児一時金」は、女性が出産した場合に、子ども1人あたり50万円を受け取れる制度です。国民全員加入の健康保険(サラリーマンの被用者保険、個人事業主等の国民健康保険)から受け取れるものです。

 

◆2. 出産・子育て応援給付金

「出産・子育て応援給付金」は、2023年から新たに施行されたものです。女性が「妊娠届出時」と「出生届出時」にそれぞれ5万円、合計10万円相当の「クーポン」または現金を受け取れるものです。

 

◆3. 出産手当金(会社員・公務員のみ)

「出産手当金」は、会社員・公務員が加入する「被用者保険」の制度です。個人事業主・フリーランスには制度自体ありません。

 

女性が、出産日(予定日より後になった場合は予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までに産前・産後の休業を取得し、給与を受け取らなかった場合に、給与額の67%(約3分の2)を受け取れるものです。

 

◆4. 育児休業給付金(会社員・公務員のみ)

「育児休業給付金」は、会社員・公務員が加入する「雇用保険」の制度です。女性が「育児休業」を取得した場合に、給与の67%(約3分の2)を受け取れる制度です。しかも、育児休業を取得し育児休業給付金を受給している間は、社会保険料の納付義務がありません。

 

なお、2023年3月、政府は育児休業給付金の給付額を給与の67%から80%へと引き上げる方針を示しました。手取りのほぼ10割を受け取れることになります。ただし、引き上げの時期は明らかにされていません。

 

育児休業給付金も、出産手当金と同様、個人事業主・フリーランスは対象外です。

 

◆5. 児童手当

「児童手当」は、中学校3年生以下の子を養育している人が、子ども1人あたり1ヵ月10,000円~15,000円を受け取れる制度です。

 

児童手当には現在、「世帯主」の所得等を条件とした「所得制限」が設けられています。所得制限は「所得制限限度額」と「所得制限上限額」の2段構えになっています。

 

まず、世帯主の所得が「所得制限限度額」を超えると、一律月5,000円の「特例給付」のみになります。そして、さらに「所得制限上限額」を超えると受け取れなくなります。

 

政府は、2025年2月支給分から所得制限を撤廃する方向を示しています。また、高校生にも月1万円を給付することや、第3子以降(厳密には、高校卒業年度までの子のうち3番目以降)は3万円に増額することも検討されています。

 

ただし、同時に高校生について「扶養控除」を廃止することも検討されており、もしそうなれば、児童手当の所得制限を撤廃する意義が損なわれてしまうとの批判もあります。

 

◆6. 高校等の授業料の実質無償化(高等学校就学支援制度)

高校等の授業料を「実質無償化」する「高等学校等就学支援金制度」もあります。

 

この制度には、所得制限があります。両親の収入の合計額について、以下の計算式で算出された額が「30万4,200円未満」の場合に、実質無償化となります。

 

(保護者の市町村税の課税標準の額)×6%-(市町村民税の調整控除額)

 

世帯の年収目安と支給上限額の関係は【図表】の通りです。

 

文部科学省「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット」より
【図表】世帯の年収目安と支給上限額 文部科学省「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット」より

 

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