(※画像はイメージです/PIXTA)

厚生労働省が2023年8月29日に公表した「人口動態統計」の速報値によると、2023年上半期(1月~6月)の出生数が37万1,052人と過去最少を記録し、少子化に拍車がかかっている現状が明らかになりました。その要因の一つに「お金」の問題があるとみられます。そこで、本記事では、子育ての「お金」をサポートする制度と、少子化対策の課題について解説します。

日本の少子化対策の課題

以上、出産・子育てを支援する公的な「給付」の制度を紹介してきました。しかし、これらの制度があるにもかかわらず、少子化に歯止めがかかっていないという現状があります。給付の制度も含め、日本の少子化対策については、主に以下の課題が指摘されてきています。

 

・「妊娠・出産」「初期の子育て」に偏重している

・育児と仕事を両立できる環境が整備されていない

・教育費の負担増大に対応できていない

 

◆「妊娠・出産」「初期の子育て」に偏重している

第一に、「妊娠・出産」「初期の子育て」に偏重しているということが指摘されます。

 

小学生以降を対象とした「児童手当」はありますが、中学生までしか受けられない点、所得制限がある点が問題視されてきました。これを受けて、前述の通り、政府は2024年にも対象を高校生まで拡大し、所得制限を撤廃する方向を示していますが、実現までにはなお課題があり、効果は未知数です。

 

◆育児と仕事を両立できる環境が整備されていない

第二に、育児と仕事を両立できる環境が整備されていないとの指摘があります。特に、育児の負担が女性に偏っている実態があります。それは、男性の育児休業取得率が18.3%にとどまっていることに顕著にあらわれています。

 

しかも、現状、個人事業主・フリーランスには会社員・公務員の「出産手当金」「育児休業給付金」に相当する制度がありません。個人事業主・フリーランスはただでさえ会社員・公務員と比べると収入が不安定になりがちなので、なんらかの制度を設けることが考えられます。

 

◆教育費の負担増大に対応できていない

第三に、教育費の負担増大に対応できていないということが挙げられます。教育費は年々高額になってきており、文部科学省「私立大学等の令和3年(2021年)度入学者に係る学生納付金等調査」によると、私立大学の授業料の平均値は2001年の年799,973円だったのが、2021年には年間930,943円と、16%以上も増えています。

 

ところが、その20年間で、国民の所得は増えておらず、物価上昇や増税等も考慮に入れると、教育費の負担はきわめて重くなっているのです。奨学金はほとんどが貸与型であり、卒業後、利子も含めた返済に苦しむケースも増えています。

 

これらの問題点は、いずれもかなり以前から指摘され続けてきていますが、現時点で解決される兆しが見えません。個別の制度を拡充させるだけでなく、総合的な見地からの対策が求められます。

 

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