誹謗中傷や批判に関するよくある誤解
誹謗中傷や批判には、誤解が少なくありません。よくある誤解としては、次のものなどが挙げられます。
発信者が匿名なら法的責任は追及できない
インターネット上の誹謗中傷や過度な批判の多くは、匿名で行われています。匿名で誹謗中傷などをしている人は、「匿名である以上は法的責任を追及されるはずがない」などと考えているのかもしれません。しかし、匿名であっても法律上問題のある行為をすれば、発信者情報開示請求などによって相手を特定することは可能です。もちろん、匿名であることを理由に、法的責任が問われないなどということもありません。
お店や会社の悪口なら法的責任は追及できない
個人への誹謗中傷ではなく、お店や会社の悪口であれば法的措置を追及できないと考えている人もいるでしょう。しかし、これは誤解です。もちろん、常識的な範囲での口コミであれば、法的責任を問われることはないでしょう。一方で、嘘の口コミでお店や会社の信用を毀損したり社会的評価を低下させたりした場合などには、刑罰の対象となったり、損害賠償請求をされたりする可能性があります。
実際に、「この店はコロナでやっていない」などと嘘をついて飲食店の信用を傷つけたとして、19歳の少年が逮捕された事例も存在します※。
これはインターネット上の事例ではありませんが、インターネット上でこのような嘘の口コミを書き込んだ場合にも、同様の罪に問われる可能性があるでしょう。
※朝日新聞:「この店はコロナ」ウソついた疑いで少年逮捕愛知県警
有名人は「有名税」があるから批判や誹謗中傷をしてもよい
SNS上などで、「有名税」という言葉を目にすることがあります。これは、「有名人であれば、多少の誹謗中傷などをされても仕方がない」というニュアンスで使用されることが多いようです。
しかし、有名税などという制度は存在せず、明示的な法的根拠はありません。誹謗中傷をした相手が有名人であったとしても、そのことだけを理由に罪が減免されたり損害賠償請求が免除されたりすることはないので、誤解のないよう注意しましょう。むしろ、有名人であれば名誉毀損などによる影響が大きくなる傾向にあるため、損害賠償請求額が高額となる可能性さえあります。
誹謗中傷や行き過ぎた批判の被害に遭ったら
誹謗中傷や、行き過ぎた批判の被害に遭ったら、どのように対処すればよいのでしょうか? 基本の対処方法は次のとおりです。
証拠を残す
インターネット上で誹謗中傷や行き過ぎた批判の被害に遭ったら、まずは証拠を残しましょう。証拠がなければ、発信者情報開示請求などが難しくなってしまうためです。証拠を残す方法としては、たとえば次の内容がわかるスクリーンショットを撮影することなどが考えられます。
・書き込みの内容
・書き込みの日時
・書き込みのURL
・SNSなどの場合には、相手のユーザー名やアカウント名、相手のプロフィールページ
なお、スクリーンショットを撮影する際には、画像ではなくPDFで保存することをおすすめします。画像でのスクリーンショットの場合、URLなどが不完全となる可能性が高いためです。
できるだけ早く弁護士に相談する
書き込みの証拠を残したら、できるだけすぐに誹謗中傷問題に強い弁護士へ相談しましょう。誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負です。そのため、できれば当日か翌日などには相談ができるとよいといえます。なお、書き込みの内容によっては、すぐに削除してほしいと考える場合もあるでしょう。
しかし、可能であれば、弁護士への相談までは削除請求をしないことをおすすめします。なぜなら、スクリーンショットの撮影に漏れや不備があった場合には追加での撮影が必要となるものの、すでに投稿が削除されていれば、追加撮影が困難となるためです。
単なる「批判」と諦めずに弁護士へ相談を
誹謗中傷と批判に、法律上、明確な線引きがあるわけではありません。いずれであっても、名誉毀損罪などそれぞれの罪の成立要件を満たすのであれば、刑事罰の対象となる可能性があります。
また、書き込みによって損害が生じた場合には、損害賠償請求の対象となる場合もあるでしょう。「批判ともとれる内容だから、法的措置は難しいかもしれない」などと自己判断で諦めず、まずは弁護士へご相談ください。
Authense 法律事務所
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