(※写真はイメージです/PIXTA)

『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者で、元国税専門官のマネーライター小林義崇氏は、約10年にわたる国税専門官の経験をとおして「多額の遺産をもらう人に対してうらやむ気持ちがなくなった」といいます。いったいなぜなのでしょうか。小林氏が相続税調査の現場で目にしてきた“富裕層の実態”をみていきます。

人はお金があること以上に「財産が減ること」を恐れている

米国の行動経済学者が提唱した「プロスペクト理論」では、人は損をしたときに大きな精神的苦痛を受けるといいます。儲かったときの喜びに比べて、損をしたときの苦痛のほうが約2倍大きいというのです。

 

それだけ人には、損失を避けようとする強い習性があるということ。損失を避けようとして保守的な判断をしがちだともいえます。財産が減ることをおそれるがゆえに、富裕層には質素な生活の人が多いともいえるでしょう。

 

私が相続税の申告漏れや脱税を指摘したとき、とくに激しい抵抗を見せたのが、専業主婦などの“収入のない相続人”でした。収入がないということは、自分の生活を遺産に頼らざるを得ません。その遺産がわずかでも減るのをおそれ、脱税などの脱法行為に出てしまうことがあるのです。

 

しかし、その代償として高い追徴税を課されるので、結局は合理的な判断とはいえません。ある意味、追い詰められた末の行動なのだと思います。

 

私のような一般人からすると、多額の遺産をもらえる人をうらやましく感じますが、だからといってお金に関する心配がゼロになるわけではないということです。私が思うに、お金を多くもっているだけでは安心できません。やはり、お金を稼げている状態を続ける必要があります。

 

一生食べていけるだけの資産をもつ人でも、実は仕事や投資などで、継続的にお金を増やそうとしています。それは、子や孫に財産を残したいという理由だけでなく、お金が減り続ける状態が精神的に辛いからでしょう。

 

そのことに気づいた私は、多額の遺産をもらう人に対してうらやむ気持ちがなくなりました。結局は誰もが自分自身でお金とのつき合い方を考えて、理想に近づく努力をしなくてはならないのです。

 

 

小林 義崇

マネーライター

Y-MARK合同会社代表/一般社団法人かぶきライフサポート理事

 

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元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者

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小林 義崇

ダイヤモンド社

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