めまぐるしく変化を続ける会計制度と税制
この10年間で会計制度は大きく変わった。たとえば、単体決算から連結決算が主体となった。税効果会計、有価証券の時価評価、固定資産や商品の減損と、毎年のように新しい制度が加わった。
新しい制度になるたびに、会計処理と記帳方法がどう変わるかくらいはどこの会社でも研究しているだろう。しかし、あまりにも変化がめまぐるしかったために、会計制度の変化にあわせて財務戦略までを立てられた会社はほとんどないものと思われる。
税務についてもまた同様である。日本の税務行政はどちらかと言えば裁量行政である。後出しじゃんけんのように、申告後かなりたってから処理を否認され、泣きをみることも珍しくない。それだけに、めまぐるしく変わる税務当局の解釈をタイムリーに把握していないと、後々思わぬ税務負担を背負い込むことになる。海外拠点を持ち現地国での納税が発生している会社であれば、日本だけでなく、現地国の税制と税務行政を熟知していなければならない。
会計士や税理士をどれだけ使いこなせるか?
会社法に関しては、あえて記述するまでもなく、経営者として知っていて当然の知識と言える。会社法を知らずに企業経営を行なうことは、野球のルールを知らずに野球を始めるようなものだ。基本を知らぬ者が、M&Aの折衝や財務に関する意思決定などできるはずもない。
会計、税務、会社法。いずれも実務家に任せればいいではないかと思う人もいるかもしれない。確かに記帳、税務申告書の作成、契約書のチェックといった実務面は、会計士、税理士、弁護士といった専門家の仕事であって、CFOの仕事ではない。だが、何もわからずに専門家のいいなりになるのと、知識があって理解した上で実務家に業務を委託するのとでは、わけが違う。
監査を任せる会計士にせよ、税務申告を任せる税理士にせよ、法律相談に乗ってもらう弁護士にせよ、100%会社側の事情を理解し、会社側の立場で行動してくれるということはまず期待できない。会社の経営陣が手綱を握っておかなければ、会社個々の事情ではなく法律一般の解釈にあわせられてしまうからだ。