今回は、親が「子の可能性を信じる」メリットについて説明します。※本連載は、東京大学薬学部卒業で、現在は作家、心理カウンセラー、イラストレーターとして活躍する杉山奈津子氏の著書、『偏差値29からなぜ東大に合格できたのか』の内容の中から一部を抜粋し、子どもの能力を最大限に引き出す親の役割と、短期間で劇的に偏差値を上げる学習法を公開します。

なぜ「点数が悪い子たち同士」でかたまるのか?

回定タイプと変動タイプのメンタルセットをもつ子どもが、失敗に対してどう向き合うかを具体的に見てみましょう。「固定タイプ」はテストで悪い点をとると、精神的に大きなダメージを受け、それが続けば「勉強の才能がないからいくらやっても無駄だ」と思い、勉強をしなくなります。

 

一方、「変動タイプ」はテストの点数が悪かったら、間違えた箇所をしっかり見直し、次は間違えないように気をつけるようになります。私が小学生のときに行っていた塾では、テストの点数が悪かった子が、先生による解説の後、さらにクラスの友だちに聞きにいくことがありました。そういうとき、点数が良かった子に説明を聞きにいく子たちと、悪い点をとった同土でかたまって話す子たちに分かれました。

 

今思えば、前者は「変動タイプ」、後者は「固定タイプ」の要素が強かったのだと思います。良い点をとっている子は問題をよく理解しているので、相手が納得しやすいようにやさしく教えられます。対して悪い点をとっている子の場合、その子自身もわかっていないことが多く、教わるにしては効率が良くありません。

 

では、なぜ点数が悪い子たち同士でかたまるのかというと、点数が悪くてショックを受けたとき、同じクラスに自分より点数の低い子がいれば安心するし、同じくらいの点数の子には共感を覚えるからです。しかし、間違えた箇所を理解できるように努めるよりも、自尊心を慰めることばかり優先していては、学力は伸びません。

 

私が東大を受験したとき、入試1日目の数学がまったくできなかったので「これは落ちた」と確信し、さすがにショックを受けました。けれども、「数学を勉強して来年また受ければいい」と早々に頭を切り替えて、その夜は2日目の勉強をやめてホテルのテレビで映画を見ました。「自分はもう東大に入れない」とか「勉強が無駄になった」と思うことは決してありませんでした。

 

母親は、私が「もう落ちた」とふてくされてテレピを見ていたときのことを、よく笑い話にしてみんなに話しました。そのときは「大学に落ちた子に対して、なんてひどい親なんだろう」と思いましたが、「受験に失敗してかわいそう」と落ち込まれたり、まして泣かれたりするよりは百倍マシでした。

「親が可能性を信じてくれること」が安心感を与える

親は子どもの挫折に対して、深刻な態度や大げさな態度をとったりするのではなく、普段通りに接することが一番大切だと思います。以前、アメリカの新聞でも、受験に失敗した子どもに対して親が冷たくなったり、距離を置いたり、態度を変えたりすると、子どもが成長してからも「失敗者」のアイデンティティから抜け出せなくなってしまう、という問題が提起されたことがあります。

 

たった一度くらい大学に落ちたからといって、失敗者なんかではありません。だから、私の親がとった態度はある意味正しかったのだと思います。さらに、今になって振り返れば、そんな受かるか落ちるかギリギリの状態で合格していても、きっと薬学部には入れなかったと思います。浪人して学力を伸ばし、学習スタイルを確立できたからこそ、東大生の中でも良い点数をとれるまで成長したのです。

 

結果論にはなりますが、現役で落ちたことは、自分にとっては失敗ではなく成功だったのです。また、私と同じ学年に、7回目の受験にしてやっと理科Ⅲ類に合格したという猛者がいました。その人とは直接の知り合いではありませんが、周囲から「もう諦めたら?」とか(同級生だった人たちはもう就職しているわけなので)「年を考えたら?」とか諭されたりしていたんだろうな、と思います。

 

けれど一度きりの人生で、彼が絶対に行くと決めた大学は東大の理科Ⅲ類だったのでしょう。そして、また想像ではありますが、彼の親、少なくともどちらか片方は、彼のことを信じて応援していたのではないかと思います。

 

たとえ周囲が反対したとしても所詮は他人で、親が可能性を信じてくれることが、結局は一番安心感を与えるのです。

偏差値29からなぜ 東大に合格できたのか

偏差値29からなぜ 東大に合格できたのか

杉山 奈津子

幻冬舎

高校3年生の秋に“偏差値29”だった著者は、一浪の末、見事に東大合格を果たす。なぜどん底の成績でも、「自分は受かる」と信じられたのか。なぜ途中で断念することなく、努力を続けられたのか。本書は、自身と周囲の東大生の…

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