転職を繰り返す人にとっての「確定拠出年金」
退職一時金や確定給付年金は、会社に長期間勤務すると支給額が増える仕組みになっているので、長期間勤務する人に有利な制度です。しかし現代では、キャリア・アップのために生涯で2~3回の転職を繰り返す人もいます。そういう人にとっては、あまり有難くない制度です。
これに対して確定拠出年金では、会社が拠出した掛金とその間の運用収益はサラリーマン自身のものです。転職して会社を替わるときでも、それを自分のものとして持ち続けることができます。
そのため確定拠出年金は、転職を繰り返しながらキャリアを築いていく人の勤務に向いていると言えます。新しい知識やスキルを持っている人材を求めている会社でも、人材の流動化を高めるために積極的に確定拠出年金の制度を導入しています。
確定拠出年金は“確定給付年金を上回る”
2022年11月16日の日本経済新聞の記事によると、2022年3月末においては、会社が掛金を拠出する確定拠出年金の加入者は782万人です。加入者本人が自ら掛金を拠出する個人型の確定拠出年金の加入者は約239万人で、合計1,021万人です。これは、確定給付年金の加入者943万人を上回ります。
自分の退職給付制度の確認
サラリーマンの退職給付制度を一覧表にすると、以下のようになります。
退職一時金や確定給付年金に加えて確定拠出年金を導入している会社もあれば、退職一時金や確定給付年金に替えて確定拠出年金を導入している会社もあります。他方、退職一時金や確定給付年金はおろか、確定拠出年金の制度もない会社もあります。つまり、退職にあたって特別な給付は一切ないという会社です。このような会社では、毎月の給与を高めに設定して“退職金は給与に織込み済み”と説明しています。
私たちは、就職あるいは転職した会社が、どのような退職金制度を導入しているのか、退職後にどれくらいのお金がもらえるのかを、しっかりと確認しておく必要があります。退職給付制度がない会社に勤務するサラリーマンは、イデコや個人年金保険、積立定期預金、財形年金貯蓄などを利用して、退職後の生活資金を確保する必要があります。
土田 義憲
公認会計士