【香典泥棒】親族のフリをして香典を集め、受付から強奪
「香典泥棒」という言葉があります。文字通り、お葬式の場で集められるお香典を持ち逃げされることですが、具体的にどういう手口でおこなわれるかご存じですか。
最近では、家族葬などの身内中心の葬儀が増えていることもあり、犯行におよびにくい環境下ではありますが、その反面、親族間の関係性が希薄化していますので、付け入る余地は閉ざされていないのです。香典泥棒が最も現れやすいのは、お通夜のときです。都市部で、ある程度の人数が集まるお葬式では特に、お通夜が最もお香典がたくさん集まり、人の出入りが多くなるからです。
お通夜の受付は、故人の会社関係・家族の知人・友人にお願いするケースがあります。そして、お通夜もほぼ終盤に近付き、集まったお金の集計をしようとしたところに、
「皆さん、本日はおつかれさまでございます。私は故人の親族の者です。あとは私が責任を持って集計し、ご遺族にお香典を渡しておきます」
「みなさま、よろしければあちらの控室で喉を潤し、お食事をなさってください…。」
などといいながら「自称親族」という人物がやってくるのです。
当然、この親族は偽物です。しかし、親族すべての顔などを確認している訳ではありませんから、受付の人たちがその真偽を見抜けるはずもありません。
「では、お言葉に甘えさせていただいて…」
などといって持ち場を離れると、あとはご想像のとおり、「自称親族」はお香典をさらって、どこかへ姿をくらましてしまいます。
最近のように家族葬が増えると、集まるお香典の額自体が少なくなるため、この手の香典泥棒も少なくなるもしれませんが、それでも全国的に見て、ある程度の人数が集まる葬儀がおこなわれるケースもあるため、用心に越したことはありません。
香典泥棒の対策として、機転の利く葬儀社では、親族に目印となる喪章を付けてもらい、受付の人に「この喪章を付けている人以外には、何があってもお香典を渡さないようにしてください」と注意喚起しておく、といった方法を取ります。
ときには、力技でお香典を強奪する輩も出現しますが、こうなると一般市民には防ぎようがありません。強盗相手に抵抗すると命の危機にさらされる恐れもあります。
特に建物の外に受付テントを設置しておこなう場合は、どこからでも出入りができるため、目を付けられやすいといえます。
【葬儀費用の詐欺】喪主宅を特定、葬儀社社員を装う周到な手口
もうひとつ注意が必要なのは、集金を装ってお葬式の費用を盗む泥棒です。
お葬式がおこなわれる前後には、町内会などに訃報の連絡が回る場合があります。その訃報には故人の住所等が特定できる個人情報が記載されていることがあります。犯罪者の多くはそれを元に情報を掴みますが、ときには火葬場から喪主の自宅まで尾行するといった地道な行動をとるケースもあるかもしれません。いずれにせよ、喪主宅の特定とあわせて、どこの葬儀社が担当したのかを調べます。
喪主の自宅と葬儀社が特定できたら、その葬儀社を装った詐欺師が喪主の自宅を訪れます。このとき、ニセの名刺を用意してくるかもしれません。
「ご葬儀、お疲れ様でした。現金をご自宅に置いておくのもなにかと物騒ですので…お花代など、お支払いできる費用があれば、先に預からせていただきます」
などと、まことしやかに説明するのです。
ただでさえあわただしく、気持ちが落ち着かないところ、名刺まで出す相手を疑う人は多くありません。そこでお金を預けてしまい、後日、本物の葬儀社から葬儀費用の精算の連絡が来たときに、
「この間、そちらから見えた担当者の方にお支払いしましたが…」
となり、ことの顛末に気付くのです。
打合せの段階から「精算方法」を決めておく
さて、この手の詐欺に引っ掛からないためにはどうすればいいでしょうか。
ひとつは葬儀前の打合せ段階で、葬儀にかかった費用の精算の仕方をどのようにするか確認しておくことです。
当然、詐欺師はこのときに葬儀社と喪主の間で交わされた費用精算の方法を知るはずがないので、事前の打合せ内容と話が食い違ってきます。その食い違いが認められたときに、
「精算方法が打合せた内容と違いますね…担当者に確認します…」
という話の流れになれば、恐らく詐欺師も退散するでしょう。
そもそも、葬儀社の社名がわかったとしても、各役割の担当者まで把握するのは大変です。葬儀社では、葬儀の施行から精算までの間に、様々なお世話をしてくれる各担当スタッフが付きます。したがって、その担当者以外が、いきなり精算のためだけに喪主宅を訪れ、集金に来ることは基本的にあり得ないと認識しておきましょう。
また最近は、
「故人から違法な荷物を預かっています。保管料を振り込んでもらえれば、そのままこちらで処分しますが、拒否されると警察に通報します…」
といった手紙が送られてくるケースもあると聞きます。これは典型的な「お悔み詐欺」といっていいでしょう。とくに地方新聞には「お悔み欄」があり、個人情報が掲載されている場合があり、そこに詐欺師が付け入るわけです。
この手のお悔み詐欺は昔からある手法で、夫を亡くした高齢の妻がターゲットになりやすいともいわれています。もし、この手の手紙、電報などを受け取った場合は、慌てることなく、警察や国民生活センター、自治体の窓口などに相談することをお勧めします。
葬儀の前後でも手を替え品を替えた、詐欺まがいの事象が起きています。大変な時にさらに追い込まれるようなことにならないために、葬儀社選びは慎重におこないましょう。今回、取り上げました内容を参考にしていただき、少しでも防犯に繋がればと思います。