高級素材を使用しても入居率が上がるわけではない
さて、ここからは、前回お話しした筆者の会社で行っている武蔵仕様(パッケージングリフォーム)の内容を詳しくお伝えいたします。
【武蔵仕様のポイント①】
クロスは「普及品+アクセントクロス」で差をつける
賃貸物件のリフォームの基本は「普及品を使う」のがポイントです。ただし、すべての部材に普及品を使うと代わり映えのしない部屋になってしまいます。
一部のオーナーさんから「輸入品の高級クロスを使った方が入居付けしやすいのでは?」とご質問を受けますが、結論から言えば入居への影響はほとんどありません。そのため当社では国産品のクロスを使います。理由は、国内産は海外製品に比べ安定供給が可能で、入退去時の張り替えにも迅速に対応できるため。前項でもご説明した通り、当社のリフォームは毎回同じ仕様ですから安定供給という条件は外せません。
それでも、クロスが廃番になることもあります。その場合は新作クロスを新規指定クロスに変更しますが、選定には手間をかけます。まず、再生するために買い受けた空室が多い自社物件でピックアップしたクロスを試し張りします。直近でも10室の空室を再生する機会に10種類のクロスを試し張りしました。これを仲介営業マンに内覧してもらって結果をヒアリングします。質感、施工のしやすさなどを考慮して最終的に1種類の壁紙を選定します。これを武蔵仕様(パッケージングリフォーム)の指定クロスとして使います。
さて、武蔵仕様ではプラスαの施工として「アクセントクロス」をお薦めしています。室内クロスの一部に高級品を使うことで、室内のグレードをアップさせることができるものです。普及品にない色や、質感のあるもの(凹凸のあるものなど)を選ぶのがポイントとなります。賃貸営業マンも入居希望者へのアピールポイントが増え、申し込みをもらいやすくなります。㎡単価は普及品+300円程度です。1K25㎡程度のお部屋で4000円程度のコストアップにすぎませんので、費用対効果は高いと言えるでしょう。
アパート事業で常に意識すべき「入居希望者のニーズ」
【武蔵仕様のポイント②】
床には白いCF(クッションフロア)を使う
筆者の会社では費用対効果を考えて床の張り替えにはCF(クッションフロア)を積極的に採用しています。理由は以下の4点です。
1.フローリングと比べコストが低い
2.バリエーションが豊富
3.部分的な補修が容易
4.フローリングと比べて歩留率への影響が少ない
いずれも利益の最大化に直結します。特に4は注目する点です。ある敏腕営業マンに聞いたところ入居希望者でCFを気にする方は10人に1人程度とのことでした。過去に「CFだったから」ということを理由に申し込みに至らなかったケースも、私の記憶では1~2回程度。もちろん、新築や家賃の高い物件で使用した場合は、歩留率低下の原因となりますので注意が必要であることは留意してください。
使用する色は幅広の白色にしています。これも色々試した結果、賃貸営業マン・入居希望者からの支持が多かったからです。繰り返しになりますが、アパート事業は趣味ではありません。オーナーさんの好みではなく、入居希望者のニーズに合わせることが重要です。
【武蔵仕様のポイント③】
既存の建具(ドア・扉)を生かす
内装のリフォームで意外とコストがかかるのが建具の交換です。傷んでいるからといってすぐに交換をしてはいけません。交換すると全体のリフォーム費用が20%程度アップしてしまいます。
筆者の会社では部分的に傷んでいる場合には建具の表面にクロスを貼ったり塗装を施したりすることで清潔感を出すようにしています。傷みがひどく建具を生かせない場合でも、単に既製品を使うのではなく、コストダウンのできる部材で交換する方法はないかを内装工事業者に確認し、部材選定することで費用を抑えています。