「30年後、介護職員は122万人不足する」…不遇の団塊ジュニアを襲う〈介護難民化リスク〉高齢化社会の厳しすぎる実情と展望【FPが解説】

「30年後、介護職員は122万人不足する」…不遇の団塊ジュニアを襲う〈介護難民化リスク〉高齢化社会の厳しすぎる実情と展望【FPが解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

高齢化社会が進む日本。バブル崩壊から景気低迷という厳しい状況のなかを過ごしてきた団塊ジュニアも、いよいよ50代となり、自身の老後について考える年齢となりました。しかしこの世代の方々は、高齢者となったとき、十分な介護が受けられない可能性が高いといえます。厳しい実情を見ていきます。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

30年後には、介護職員が「122万人不足する」

生徒:私は母親の介護を行っていますが、かなり負担が重く、つらい状態です。そのため、なるべく訪問介護やデイサービスを使うようにしています。今後、ますます高齢化社会が進んでいくことになりますが、将来、私自身が受ける可能性がある介護について、不安を感じています。

 

先生:人口が1億人を割る2056年の日本では、4人に1人が65歳以上になります。これは現役世代が1.3人で1人の高齢者を支える社会です。介護が必要な人は2050年度に941万人に膨らむ一方、介護するために必要な人数は、4割も不足すると予想されているのですよ。おそらく高齢者が高齢者を介護する「老々家族介護」の時代が到来するでしょう。

 

生徒:私は、団塊ジュニアと呼ばれる50代です。バブル経済の崩壊とともに社会人となり、デフレの25年間、厳しい状況下で働き続けています。これだけ苦労しているのに、老後もさらに厳しい生活が待っているのですか…。

 

先生:お気の毒ですが、そういうことになります。日本では85歳以上の高齢者のうち6割が介護認定されていますが、団塊ジュニアの多くが80代となる30年後、介護をしてくれる人は大きく減少します。2050年度に介護保険で「要介護」か「要支援」となる人は941万人まで増えると予想され、その場合、施設や訪問で介護を行う「介護職員」は302万人必要だといわれています。しかし実際には、その6割の180万人しか確保できず、122万人が不足するとされています。

 

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生徒:介護を受けられなくても生活することは可能でしょうか?

 

先生:介護の認定状況を見ると、自力での歩行や入浴が難しくなってくる「要介護2」以上の人が5割を占めています。もし必要となる介護職員が6割しかいないとすれば、介護が受けられるのは要介護認定を受けた人たちだけで、400万人近くいる「要支援」の人たちは、介護を受けられないでしょう。要支援というのは、日常生活の基本的な動作は自力で行えるものの、負担の大きい家事等には支援が必要な状態をいいますが、介護職員のサポートが受けられないなら、自分で家事をするしかないでしょう。

 

生徒:では、介護職員の給料を上げて、もっと介護職員を増やすという方法はどうでしょうか?

 

先生:介護保険にかかるお金はものすごく大きいのです。2040年度の介護費用は25兆円になると予想されており、日本の財政では、これ以上介護費用を増やすことが難しいと考えられています。それに、また、介護は心身の負担が大きいため、介護職員は慢性的に人手不足の状況です。

 

生徒:外国人の採用はどうでしょうか?

 

先生:海外人材を受け入れたいところですが、ご存じのように、高齢化が進んでいるのは日本だけではありません。中国をはじめとする多くの国々と世界的な獲得競争になることから、採用は簡単ではないといえます。

 

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「老後の生活は公的な介護保険で安心」介護給付・予防給付・市町村特別給付について

高い利用料を払って民間の老人ホームに入るか、もしくは…

生徒:介護サービスを受けられない場合、自分の子どもの世話になることも想定する必要がありますね。しかし、私には息子が一人いるだけなので、頼れそうになく、できれば老人ホームへの入居を希望しています。特別養護老人ホームなら、入居一時金がゼロで、毎月の利用料が10万円くらいだと聞いています。

 

先生:利用料の安い特別養護老人ホームは、2022年の時点で25万人以上の高齢者が順番待ちをしていますから、期待しないほうがいいでしょう。やはり、高い利用料を支払って民間の老人ホームに入ることになる可能性が高いといえます。

 

生徒:民間の老人ホームの費用はどれくらいでしょうか?

 

先生:民間の介護付き有料老人ホームの場合、入居一時金は200万円くらい、毎月の利用料は25万円くらいだといわれています。3年間入居すると、トータルで1,000万円は必要になります。

 

生徒:高額ですね! 私はあまり老後資金のための貯蓄がありませんから、公的年金に頼る生活になると思います。老人ホームに入るために、それほどのお金を支払うのはとても無理です…。

 

先生:有料老人ホームの費用は、家賃の安い地方のほうが安くなります。当然、東京都がいちばん高いわけですから、自分の経済状況を考えながら、地方の老人ホームを検討することも重要ですね。たとえば、宮崎県や青森県は、入居一時金がゼロ、毎月の利用料は10万円くらいとなっており、特別養護老人ホームと同じ水準のところもあります。

 

生徒:おそらく私は、老後を地方都市で暮らすことになりそうです。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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