世界が「カーボンオフ」へ突き進むなか…バフェットが〈史上最高値圏〉のエネルギー関連株を買い増したワケ

世界が「カーボンオフ」へ突き進むなか…バフェットが〈史上最高値圏〉のエネルギー関連株を買い増したワケ

20年・21年に売り調整を続けていたウォーレン・バフェットが2年ぶりに沈黙を破り、半年間で5兆~6兆円分もの米国株式を購入しました。本稿では、岩永憲治氏の『金融暴落! グレートリセットに備えよ』の中から一部を抜粋し、激しいインフレやロシア・ウクライナ紛争、欧米の利上げによって、バフェットのポートフォリオに起きた変化について解説します。

今後は厳しく峻別されるグロース株

現況のインフレの高騰、ロシアVSウクライナ紛争、欧米の利上げの影響から、株式市場は2022年の前半から秋口にかけて下落し続けた。にもかかわらず、「オマハの賢人」とも称されるウォーレン・バフェットは過去2年間(2020年および2021年は売りで調整)におよぶ沈黙を破った。

 

2022年第1四半期と第2四半期の半年間に、バークシャーは過去20年では最高水準にあたる5兆〜6兆円分の米国株式を購入した。

 

コロナ禍でバイデン政権による過剰な財政出動により、NYダウ、S&P500が異常に押し上げられ高騰していた際には、バフェットは米国の大手金融機関に対してこう非難した。

 

「銀行は投機的な行動を奨励しており、マーケットを賭博場にしている」

 

そして2022年の年初からFRBがQEからQTへと利上げモードに突入するなか、バフェットはチェンジ・マインドした。

 

「我々にとって興味深い銘柄が浮上した」と発言し、米国株式の大量買いを実行し始めたのである。

 

バークシャー・ハサウェイの会長兼CEOのウォーレン・バフェットは、世間一般からは株式投資においてずば抜けた好成績を上げ、米国にあっては常に長者番付の上位に君臨する、世界でも有数の投資家と評されている。

 

よって世界トップクラスのメンバーが、彼の発言に着目する。

 

2022年の同社の株主総会には、アップルのCEOティム・クック、JPモルガン・チェース銀行のCEOジェイミー・ダイモンも駆けつけている。

 

それではドル紙幣(現金)の価値を下落させるインフレ状況下、大事な資産を守るためにインフレ対応をしているウォーレン・バフェットの投資戦略の中身をさらに点検してみよう。

 

2022年8月15日に米証券取引委員会(SEC)に提出したバークシャー・ハサウェイの6月末時点での米国株の株式保有報告書によると、シェブロン(Chevron)、オクシデンタル・ペトロリアム、アップルを買い増し、銀行株を微調整しているとある。

 

ということは、ポートフォリオの約半分を占めるアップル株をさらに買い足して、エネルギー関連の投資を大量に増やし、金融関連株に手を加えたということになる。

 

石油大手のシェブロンと石油・ガスの探鉱生産企業のオクシデンタル・ペトロリアムの株式購入に250億ドル(1ドル=140円換算で3兆5000億円)以上を投じた積極的な買い入れは、彼らが化石燃料に対して“超強気”であることへの意思表示となる。

 

世界が政治的に化石燃料から「カーボンオフ」を念仏のごとく唱えているなか、バフェットがエネルギー関連株への巨額投資に踏み切った意味合いとは何か?

 

低金利時代に高成長を遂げてきたGAFAM(Google、Amazon.com、Facebook、Apple、Microsoft)、FAANGに代表されるようなグロース株は今後、厳しく峻別される。

 

高金利かつインフレ時代にあっては、資源・エネルギー株に妙味ありと捉えているからと言えよう。なお米国では、2022年8月に「インフレ削減法」が成立。オクシデンタル・ペトロリアムにとっては、税額控除が拡大されたことによって利益が拡大し、投資を受ける追い風となっている。

 

注目すべきバフェットの「俊敏」な投資行動

通常、バフェットクラスの投資家であれば、最高値圏内にあるような株式に手を出すことはない。

 

だが、彼は2021年第3四半期以降、株価が右肩上がりとなっているシェブロン、オクシデンタル・ぺトロリアムの株を、史上最高値圏内にあっても大量に購入した。つまり、その時点でも株価は道半ば、まだまだ上がっていくと見ていたのだろう。

 

そして、引き続き高金利かつインフレ・ヘッジ、いざとなった時のないものねだりの希少価値からの高騰、暴騰の可能性を見込んでいるのではないだろうか。

 

バフェットが率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイは、2022年第1四半期にシェブロンの株式保有高を3800万株から1億5800万株に買い増しし、さらに第2四半期にも追加購入している。

 

では、現状シェブロンの株価はどうなっているのか。2022年は30%もの上昇を見せ、シェブロンのみの評価額でも約250億ドル(1ドル=140円換算で3兆5000億円)となった。

 

一方、1億5900万株保有していたオクシデンタル・ペトロリアムについては、FRBが利上げしたあとも追加購入したことで、1億8800万株まで拡大した。同社の発行株式総数の20%まで保有するに至ったのは前述の通りである。

 

なお2022年9月末時点でバークシャー・ハサウェイは、最先端の半導体の集積回路などを製造・販売するTSMC(台湾積体電路製造)、建設用資材のルイジアナ・パシフィック、総合的な金融サービスを提供する独立系投資銀行ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループを新規保有していた。

 

しかし2022年末時点では一転、10〜12月期にTSMCの保有株式数を9割近く減らしている。台湾の地政学リスクは、やはり無視できないとの判断なのかもしれない。

 

いずれにしても、その投資行動は俊敏で、注目すべきものがある。

 

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金融暴落!グレートリセットに備えよ

金融暴落!グレートリセットに備えよ

岩永 憲治

集英社

もうすぐリーマン・ショック級の金融危機が起きる!?元敏腕トレーダーが近未来の経済危機を予測し、潮目の見方を指南! リーマン・ショックから15年。コロナ禍やウクライナ戦争で世界の情勢も変わり、それまでのグローバル経…

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