遺言の無効リスクを回避するには…
遺言書を残すときにも注意が必要です。遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。
①自筆証書遺言
「自筆証書遺言」は、遺言をする人が自分で遺言の全文をすべて自筆で書き、捺印をします。証人や立会人を不要としますので費用もかからず、遺言書を作成したことを秘密にすることができます。しかし、法律の要件のとおり作成されていないと遺言が無効になってしまったり、偽造、紛失等をされてしまうリスクもあります。
裁判所で検認手続を行うことが必要となりますので、所定の費用もかかります。ただし、2020年7月10日からは、各地の法務局が自筆証書遺言を保管する制度が開始されています。法務局が保管をすることで、紛失や改ざんを防止し、家庭裁判所の検認手続も不要となります。
②公正証書遺言
「公正証書遺言」は、公証人が遺言の内容を聞いて、遺言者に代わって遺言書をつくります。通常、原本・正本・謄本の合計3通をつくり、正本と謄本は遺言者(遺言執行者を指定すればその人)に渡されますが、原本は公証役場で原則として20年(遺言者100歳まで保管の例が多い)保存されます。公証人に依頼する費用はかかりますが、無効になったり、紛失や偽造のリスクもなく、裁判所の検認手続も不要です。
③秘密証書遺言
「秘密証書遺言」は、封を施された遺言書の中に、遺言書が入っていることを公正証書の手続で証明します。遺言の内容を秘密にしておけるため、偽造などのリスクはありませんが、内容については本人が作成するため、不備がある可能性もあります。
公証役場には、遺言書の封紙の控えだけが保管されますので、隠匿等のリスクもあります。2人以上の証人の立会いが必要であることや、家庭裁判所の検認手続も必要となります。不安要素を減らすという点では、費用はかかりますが、「公正証書遺言」のほうがよいといえます。
「相続放棄」は相続人の死亡を知ってから3ヵ月以内に
相続税の申告・納付期限についても注意が必要です※5。相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行わなければなりません。たとえ、遺産分割が終わっていなくても、相続税の申告は期限までに行わなければなりません。法定相続分などの割合で各相続人が申告・納税を行い、その後、実際に行われた遺産分割の割合に応じて、修正申告、更正の請求を行うことになります。
ただし、中には、負債が多いなど、諸事情からそもそも相続を放棄したいという方もいると思います。その場合は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内にしなければならないと定められています※6。
諸手続が必要となりますが、不安な場合は、専門家に相談をされるのがよいでしょう。例えば、弁護士に相談をしたいけれど、探し方がわからない場合、日本司法支援センターの法テラスのホームページ※7では、相談窓口を調べることができますので、そこで調べた相談窓口を利用されるのも一案です。
※5 国税庁ホームページ
※6 裁判所ホームページ
※7 日本司法支援センター 法テラスホームページ(https://www.houterasu.or.jp/madoguchi_info/index.html)
小島 明子
日本総合研究所創発戦略センター
スペシャリスト
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