(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活を支える公的年金。しかし、自営業者の場合は定年がないことから、原則として国民年金のみの設計となっている。とはいえ、国民年金は満額受給でも6万円強。自営業者は老後生活にどうやって備えればいいのか。実情を見ていく。

自営業者の平均貯蓄額、2,000万円超だが…

総務省『家計調査 貯蓄・負債編』(2022年)によると、勤労世帯(世帯主年齢:平均50.2歳)の平均貯蓄額は1,508万円、負債は576万円だった。貯蓄現在高から負債現在高を引いた純貯蓄額は平均629万円で、世帯主が会社や官公庁等勤務の勤労世帯では(社長、取締役、理事など会社団体の役員を除く)600万円強の余裕があることがわかる。

 

民間企業に勤めている会社員世帯(平均49.8歳)の場合、貯蓄は1,773万円、負債は975万円で、純貯蓄額は824万円。公務員(平均47.8歳)世帯の場合、貯蓄は1,728万円、負債は1,035万円で、純貯蓄額は693万円。貯蓄額の平均値では公務員が社会員より少ないという結果になった。

 

では、自営業(平均62.4歳)の場合はどうか。平均貯蓄額は2,099万円、負債は625万円、純貯蓄額は1,474万円。そのうちの「商人・職人」(平均61.7歳)では、貯蓄は1,999万円、負債は675万円、純貯蓄額は2,377万円。「個人経営者」(平均60.6歳)では、貯蓄は3,041万円、負債は664万円、純貯蓄額は664万円となっている。

 

※ 事業主一人のみで事業を行う場合に限らず、家族や従業員などと複数で事業を行っていても、それが法人でなければ個人事業主とされる

 

自営業は会社員や公務員よりも稼いでおり、貯蓄額も大きいことから、やはり、独立して仕事をするだけの気概がある人たちは、稼ぐ力も強い――と思ってしまうが、これはあくまでも平均地であり、実際には、すべての自営業者がサラリーマンを超えて稼いでいるわけではない。

 

とはいえ、自営業者には「定年退職しなくてよい」という強みもある。好きな仕事を自分の裁量ですることができ、年齢を理由にキャリアを中断することもない。この点だけ見ればまさにいいことづくめだが、じつは自営業は公的年金のサポートが薄く、会社員に比べて老後資金の不安が生じやすいという問題もある。

自営業者、年金額を考慮すれば「生涯現役の覚悟」も必要か

会社員であれば国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金(老齢厚生年金)の合計となる、平均で月14万円程度を受給できる。65歳以上に限れば月17万円程度だ。

 

しかし、自営業の公的年金は国民年金のみだ。2023年4月(同年6月支払い分)から満額支給で月6万6,250円。これが自営業の老後を支えるひとつの柱となる。

 

満額を受給しても、たった月6万円強。貯蓄も自営業の平均額があれば心強いが、そんな人ばかりではあるまい。60歳を過ぎても老後の資金が不十分なら、望むと望まざるとにかかわらず、「生涯現役」の可能性は限りなく高くなる。

自営業が年金を増やすための「具体的な方法」

年金額を考えれば、自営業の老後は不安が残る。その点からも、計画的な老後の資産形成が不可欠だ。近年ではなにかというと投資に注目が集まるが、年金を増やす方法も検討したい。

 

日本の公的年金は原則2階建ての構造となっている。1階部分が国民年金で、日本人の全員が加入対象だ。そして、国民年金に上乗せされる2階部分が厚生年金であり、会社員や公務員が対象となる。さらに3階建て部分として、企業年金など任意で加入するもが乗ってくる場合もある。自営業の場合、1階以上はすべて任意になるわけだが、そのひとつに「国民年金基金」がある。

 

任意加入の私的年金保険という位置づけの「国民年金基金」は、国民年金の第1被保険者、60~65歳未満、または海外に居住する人で国民年金に任意加入している人が加入できる。

 

一定の掛け金で年金額が確定し、その掛け金は月6万8,000円、年間81万6,000円が上限。全額が所得控除の対象となり、節税しながら老後対策ができるメリットがある。

 

もうひとつの選択肢が「付加年金」だ。これは国民年金保険料に月400円を上乗せするもので、「200円×納付月数」が年金に加算される。国民年金と同様、最長で40年加入でき、毎月の保険料が少ないうえに、年金を2年受給すれば元を取ることもできます。

 

たとえば45歳から60歳までの15年間、付加年金に加入すれば、月3,000円が加算されることになります。また、年金の繰り下げ受給で65歳以降に年金の受け取りを開始すると、その分、付加年金も同様に増額となるメリットもある。

 

自営業の場合、会社員並みに公的年金を受給することは難しいが、億劫がらずに手当てできるところは手当てし、わずかであっても上乗せをしてくことが大切だ。

 

ほかにも「小規模企業共済」や「個人型確定拠出年金(iDeCo)」といった制度も準備されている。これらも加入が早いほど受給額も多くなるため、1日でも早く加入することをお勧めする。


 

 

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