年齢を経て働き続けるために必要な「変化への適応力」
現役で働く中高年世代がより良い条件、あるいは今までの仕事のスキルや経験を活かしながら働き続けるためには、携わっている仕事が成長産業ではない場合、成長産業に焦点を当てる、あるいは、今まで携わってきた仕事で得られた経験やスキルの他業界、他職種での再現可能性を考慮し、必要に応じて教育訓練を受ける必要も出てきます。
外部環境の変化に伴い、必要とされるのは、業種や職種を柔軟に選択でき、新しい価値観やスキルを受け入れられる個人としての柔軟性です。副業・兼業での働き方も新たな産業に移る手段ですが、個人としても、物理的、精神的な変化に対応できる人材であることが、男女問わず求められているのです。
野村総合研究所と英国オックスフォード大学のマイケル・A.オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士との共同研究(※4)によれば、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能等で代替可能になることが指摘されています。
同研究の中では、芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があるといいます。
一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できていると記されています。
定型化される業務そのものが減ることを想定すれば、年齢が上がるほど、条件の良い仕事を得るチャンスそのものが少なくなると考えます。経済産業省が推計したデータ(※5)によれば、主な「職種」ごとの必要となる労働者数の相対的変化をみると、事務や販売の仕事が減少すると予測されています(図表3、4)。
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注:全労働者数に占める各職種の割合の変化率(2020年→2050年)
出所:労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)」、「職務構造に関する研究Ⅱ」(2015年)、World Economic Forum “The Future of Jobs Report 2020”, Hasan Bakhshi et al., “The future of skills: Employment in 2030”、内閣府「産業界と教育機関の人材の質的・量的需給マッチング状況調査」(2019年)、文部科学省科学技術・学術政策研究所「第11回科学技術予測調査ST Foresight 2019」等をもとに経済産業省が推計
これらの職種はAI等で代替される可能性があるため、減少するのだと考えます。一方で、サービス職業従事者といった、代替がしづらい職種や、専門的・技術的職業従事者といった新たな技術開発を担う職種では、雇用が増えることが予想されます。
また、職種構成の内訳は、各産業の雇用の増減に連動しており、今後、高齢化で増えることが予想される医療・福祉は約3割増えることが予想されています。IT化に伴って必要とされる情報通信業や、ネット通販の宅配需要によって増える運輸業などについても、増えることが読み取れます。
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注:全労働者数に占める各職種の割合の変化率(2020年→2050年)
出所:労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)」、「職務構造に関する研究Ⅱ」(2015年)、World Economic Forum “The Future of Jobs Report 2020”, Hasan Bakhshi et al., “The future of skills:Employment in 2030”、内閣府「産業界と教育機関の人材の質的・量的需給マッチング状況調査」(2019年)、文部科学省科学技術・学術政策研究所「第11回科学技術予測調査ST Foresight 2019」等をもとに経済産業省が推計
今後も働き続けることを考える場合、今、ご自身が携わっている業界や職種は将来性があるのか、なければ、必要に応じて学び直し等の軌道修正が必要となってくるといえます。
※4 野村総合研究所「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に〜601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算〜」(2015年12月2 日)。
※5 労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)」、「職務構造に関する研究Ⅱ」(2015年)、World Economic Forum “The Future of Jobs Report 2020”, Hasan Bakhshi et al., “The future of skills:Employment in 2030”、内閣府「産業界と教育機関の人材の質的・量的需給マッチング状況調査」(2019年)、文部科学省科学技術・学術政策研究所「第11回科学技術予測調査ST Foresight 2019」等をもとに経済産業省が推計。