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土地を家族に渡す場合、生前贈与でも相続でも渡せる点は同じですが、かかる税金の種類や税率が変わります。土地を受け取る家族の税負担や手続き面での負担が少なくて済むのは、生前贈与と相続のどちらなのでしょうか。本稿では、司法書士法人みどり法務事務所の司法書士辻本歩氏監修のもと、土地の生前贈与と相続を比較して、税金や手続きがどのように違うのか解説します。

土地の贈与・相続でうまく活用したい主な特例制度

生前贈与や相続で土地を渡す場合、特例制度の要件を満たすように工夫すれば贈与税や相続税を安くできる場合があります。以下では土地の贈与・相続でうまく活用したい主な特例制度を紹介します。

 

【配偶者控除】相続なら最低でも1億6千万円、贈与なら最大2千万円が非課税になる

配偶者が遺産を相続する場合、少なくとも1億6千万円の遺産までは相続税がかかりません。子や兄弟姉妹など配偶者以外の人が土地を相続すると相続税が高額になる場合でも、配偶者が土地を相続するようにすれば相続税を安くできる場合があります。

 

また配偶者に土地を生前贈与する場合、贈与税の配偶者控除を使えれば最大2千万円の贈与まで贈与税はかかりません。配偶者が贈与される土地が居住用であり婚姻期間が20年以上であることなど、一定の要件を満たすと配偶者控除を適用できます。

 

【小規模宅地等の特例】土地の評価額を最大80%減額して相続税を計算できる

小規模宅地等の特例とは、被相続人の配偶者や同居の家族など一定の要件に該当する人が居住用・事業用の土地を相続する場合、土地の評価額を最大80%減額して相続税を計算できる特例制度です。1億円の土地を相続しても80%減額できれば税額計算に含まれる価格は2,000万円で済むので、節税効果が大きい制度といえます。

 

居住用の土地を同居の家族が相続する場合は「相続開始の直前から相続税の申告期限まで建物に居住し、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」が条件となりますが、配偶者が居住用の土地を相続する場合は居住の有無は問われません。

 

【相続時精算課税制度】2,500万円の贈与まで贈与税がかからない

相続時精算課税制度とは、財産を生前に贈与しても2,500万円までは贈与税がかからずに済み、当制度を使って生前贈与した財産が相続税の課税対象になる制度です。2,500万円を超える贈与をした場合は、超える額に対して20%の税率で贈与税がかかります。

 

相続時精算課税制度を使えば贈与額が累計2,500万円以下だと贈与税はかからず、相続税の計算に含まれてもその他の遺産と合わせて遺産額が基礎控除額以下であれば相続税もかかりません。

 

相続時精算課税制度を使えるのは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫に贈与する場合など、一定の要件に該当する場合に限られますが、うまく活用すると税金を安く抑えられる場合があります。

 

土地を生前贈与で渡すほうが良いケース

以下で紹介するケースに該当する場合は、土地を生前贈与するとメリットが大きくなる可能性があります。相続で渡すのではなく生前贈与を検討してみると良いでしょう。

 

相続トラブルになる可能性がある場合

家族の仲が悪い場合、相続が起きたときに相続人で揉めることがあります。生前に財産を贈与しておけば分け方を巡って揉める原因となる遺産が減るので、相続まで待たずに土地を生前贈与することも選択肢のひとつです。生前贈与であれば自分が渡したい人に確実に土地を渡すことができます。

 

賃貸マンションなど収益物件が建っている場合

収益物件が遺産に含まれる場合、相続までその物件を持ち続けると家賃収入も相続財産に含まれてしまい、遺産額が増えて相続税が高くなります。しかし、生前に土地と収益物件を贈与してしまえば家賃収入は受贈者のものになるので、相続財産が増えたり相続税が増えたりする心配がなくなります。

 

相続まで待たずに財産を早く活用してもらいたい場合

相続まで待ってから土地を渡すと、相続する側が土地を必要としていない場合や相続しても使い道がなく困る場合があります。しかし、生前に贈与する場合は贈与するタイミングを選べるので、受け取る側が土地を必要としているときに贈与することが可能です。

 

例えば、子がマイホームを建てるときに土地を贈与すれば有効に活用してもらえます。

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