33歳会社員の夫逝去で、幼子2人抱えた専業主婦の妻が受け取る「遺族年金額」…「生命保険金」はいくら備えておく?【経済コラムニストが解説】

33歳会社員の夫逝去で、幼子2人抱えた専業主婦の妻が受け取る「遺族年金額」…「生命保険金」はいくら備えておく?【経済コラムニストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

強制加入で国民みんながお金を少しずつ出し合うように義務づけられ、成り立っている「社会保険」。もしものときの備えとして民間の保険で社会保険で賄え切れない部分を補填する際にも、社会保険で自分がいくら受け取れるのかを知っておかなければ、無駄な保険に加入してしまう可能性があります。本連載では、経済コラムニストとして活躍する大江英樹氏の著書『50歳からやってはいけないお金のこと』から、社会保険の知識について、一部抜粋してご紹介します。

年金も民間とは大きな差がある

医療保険だけではなく年金の受取額でも考えてみましょう。厚生年金の場合は報酬によって保険料支給額が違ってくるので、わかりやすく説明するため、国民年金の例で考えてみます。

 

まず民間の保険会社が販売している終身で支給される個人年金保険ですが、ある保険会社の例で見ると、65歳まで加入し、そこから終身で年金が受け取れます。

 

仮にこの個人年金保険に35歳から65歳まで30年間加入したとします。毎月の保険料は約2万3,000円なので30年間の払込保険料の総額は830万円ぐらいになります。一方、受け取りは年間40万円なので、払い込んだ保険料を上回るには21年かかることに なります。つまり86歳まで生きていないと、いわゆる“元がとれない“ということになるのです。

 

これに対して国民年金の場合、払込は60歳までで、65歳から終身で支給されます。こちらも同じ期間の30年間払い込んだ場合、保険料の総額は過去30年間の推移で計算すると約439万円となります。支給される年金は65歳から毎年58万5,000円ほどですから、払い込んだ保険料を上回るまで7年半、つまり73歳で元がとれるということになります。

 

年金は保険ですから元がとれるとかとれないとかはあまり意味のない議論なのですが、それでも民間の個人年金保険に比べると同じ30年間で払い込む保険料は半分近くなのに受け取る金額は1.5倍ぐらいになるわけですから、どちらが得かは一目瞭然です。

 

ここでは同じ30年間で比較しましたが、国民年金は本来20歳から60歳までの40年間加入が原則なので、フルに加入すれば毎年の年金額は77万7,800円になります。

 

自営業の人の中には国民年金の保険料を払わずに保険会社の個人年金保険に入っている人もいると聞きます。民間の個人年金保険に入るかどうかはその人の自由ですが、少なくともまず優先すべきは国民年金保険料を払うことだというのはおわかりいただけると思います。

年金が持っている3つの機能

次に、年金が持っている生命保険の役割についてお話ししましょう。

 

厚生年金保険には大きく分けて3つの機能があります。この3つの機能は国民年金でも同じですが、厚生年金の方が保険料を多く払う分、支給額も大きくなっています。

 

3つの機能の中で最も重要な役割は「老齢年金」と呼ばれるもので、定年になり、仕事を完全に引退した後の生活をまかなうために支給されるものです。この機能を通常、我々は「年金」と呼んでいます。これ以外にも、病気や怪我で障害を負ってしまった時に支給される「障害年金」という機能もあります。

 

これら2つはいずれも、本人が何らかの事情で働けなくなったり働きづらくなったりした時に支給されるものです。

 

これに加えて「遺族年金」という機能もあります。これは本人が亡くなった時の遺族に対する補償の役割を果たします。言わば、民間保険で言う生命保険の役割なのです。ということは、雇われて働いている人は誰もが厚生年金保険に入っているわけですから、ある程度は生命保険の機能が既にあるわけです。

 

したがって生命保険に入る必要があると判断した場合でも、まずはこの遺族年金がどれぐらい支給されるのかを考えて、その後にどれぐらいの保険金で入るかを決めればいいわけです。

生命保険はいくらぐらい入っておけばいいか

例えば夫が会社員で妻が専業主婦、小さい子供が2人いるという前提で考えてみましょう。

 

こういう設定だと、夫に万が一のことがあった場合、生命保険が必須と考えるべきでしょう。ただ、遺族年金がどれぐらい支給されるかを知っておくべきです。

 

この場合、遺族基礎年金は年間約123万円支給されます。遺族厚生年金はそれまでの加入期間や報酬金額に応じて異なりますが、ここでは年齢33歳、それまでの加入期間(156ヵ月)に基づく厚生年金額が年額約28万円という前提で考えると、受け取る遺族厚生年金は年間約40万円となります。遺族基礎年金とあわせると約163万円です。

 

こういうシチュエーションで夫が亡くなると、多くの場合、妻は働くことになるでしょう が、それまでに数年かかるかもしれません。

 

もし小さい子供2人と妻1人の3人家族で年 間の支出が300万円だとすると、5年間、何もしなくても食べていくためには、1500万円は必要です。遺族年金が年間163万円あるとすると、5年分で815万円ですから、残りの700万円ぐらいを生命保険で受け取れれば、生活費が最低限まかなえます。

 

もちろん保障額は自分なりに考えて多めにしてもいいと思いますが、少なくとも遺族年金、そして場合によっては会社から何らかの弔慰金とか一時金があるかもしれないということも考えた上で、必要額を決めればいいのではないでしょうか。

 

50代以降になると「ねんきん定期便」に自分が将来受け取れる年金額が載るようになります。遺族厚生年金は、その金額の4分の3を受け取れることになりますので、その金額を確かめた上で、現在の家族構成も考えて、今入っている生命保険が必要か不要かという見直しを考えるのがいいと思います。

 

我が国においては誰もが社会保険に必ず加入しています。まずは自分が入っている制度の内容をしっかりと理解し、確認した上で、民間の保険会社の保障を考えるのがいいと思います。

 

最も大事な保険は「社会保険」なのですから。

 

 

大江 英樹

株式会社オフィス・リベルタス

取締役

 

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50歳からやってはいけないお金のこと

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大江 英樹

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