Googleのカルチャー
CEOであるサンダー・ピチャイ氏は、従業員宛の公式メールで、「当社には時代を超越した使命、永続的な価値観、そして毎日仕事に来るのが楽しくなるコラボレーションと探求の文化があります」と述べています。その企業文化はどのようにして成り立っているのか、ここではさらに掘り下げていきます。
社員は家族
2021年、GoogleはGlassdoor(現在および元従業員が匿名で企業をレビューするアメリカのWebサイト)で「最も働きやすい職場」として6位にランクインしました。また、「Best Global Cultural 2021」「Best Places to work in Los Angeles 2021」など、働く環境に関する9つの賞を受賞しています。また、従業員の80%が自分の職場を肯定的に評価しています。
このような結果をもたらしているのが、「従業員はファミリーの不可欠な一員」だと考えるGoogleの企業文化です。
Googleは「Uncomfortably exciting(うずうずするくらいエキサイティング)」という考えを推進しており、すべての従業員に浸透しています。また、可能な限りすべての情報を従業員と共有して、プロセスの透明性を維持しようとしており、Googlegeist(グーグルガイスト)と呼ばれる、全社員が企業文化、報酬、上司、ワークライフバランス、キャリアの機会などを評価する年に1度の調査を行っています。
人事部が主導するこのアンケートは、毎年9割近くの回答率を誇っています。このような試みを通じて、Googleの文化は健全な職場環境の代表例として挙げられるようになったわけです。
イノベーション
Googleはイノベーションのために「Think 10x」というルールを掲げています。これは「製品を10%ではなく、10倍改善する」というルールです。また「ソフトオープニング」アプローチをいう手法を通じて新しいサービスに関するユーザーのフィードバックを収集し、製品の改善に役立てています。
こうした企業文化が根付いた結果、Googleは創業以来、YouTube、Googleマップ、Googleドライブ、Gmail、Googleフォトなど、さまざまな革新的サービスを立ち上げ、発展してきたわけです。Googleで唯一不変のものは、革新と進化なのです。
職場を楽しく
従業員が長時間楽しく働ける職場を作るのは至難の業です。Googleは現在「Googleplex(グーグルプレックス)」と呼ばれる本社で稼働していますが、そこにはジムやスイミングプール、仮眠ポッド、さらにはマイクロキッチンや無料のランチとディナーまで提供しています。
従業員を退屈なデスク環境、無機質な会議室、フォーマルな企業環境から解放するために、革新的で楽しい職場環境を作り出すことに成功し、これによりチームの効率が向上し、従業員の生産性が向上したわけです。
フレキシビリティ
Googleは約14万人の従業員と50ヵ国、70を超えるオフィスを擁しています(2021年)が、最近では3日間をオフィスで過ごし、2日間を最適な場所で過ごす、ハイブリッドな働き方を取り入れています。柔軟なスケジュールにより、従業員が創造的なアイデアを探求し、好ましい環境で自由に働くことができるようになったわけです。
これも「最終的に会社を素晴らしいものにするのは人だ」というGoogleの企業文化を示す、ひとつの例だといえます。
心理的安全性
従業員に企業文化を浸透させるうえで大切になるものが「心理的安全性」です。これは「対人関係においてリスクのある行動をしても安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」です。Googleのリサーチチームによると、心理的安全性の高いチームのメンバーは離職率が低く、ほかのチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍多いという特徴がありました。
チームの心理的安全性を高めるには、以下のことを心がけましょう。
1.積極的な姿勢を示す
目の前の会話に集中する、チームメンバーから学ぼうという意欲を持って質問をする、対話的なコミュニケーションを心がける、会話の当事者として積極的に話を聞くことが必要です。
2.理解していることを示す
理解が一致していることを確認するために相手の発言内容を要約する、話の内容を理解したことを言葉で示す、会話中や会議では、話を聞いていることを示すためにうなずくことが含まれます。
3.対人関係において相手を受け入れる姿勢を示す
チームメンバーのために時間を割き友好的な態度を示す、チームメンバーの貢献に対して感謝の意を示す、相手に対して開かれた姿勢を取る、チームメンバーと親密な関係を築くなどが挙げられます。
4.意思決定において相手を受け入れる姿勢を示す
チームメンバーに意見やフィードバックを求める、人の話を妨げない、意思決定の背後にある根拠を説明する、ほかのチームメンバーの貢献を認めることが必要です。
5.強情にならない範囲で自信や信念を持つ
チームディスカッションをコントロールする、チームをサポートする、チームを代表して行動する、反論したり異論を唱えるようチームメンバーに促す、リスクを取るようチームメンバーに促し、自分の仕事でも実践してみせることが挙げられます。
ミッションとカルチャーによって会社を成長させる
ここまでGoogleの企業理念や企業文化を見てきましたが、「実際にうちの会社に取り入れるのは難しいな」と感じたものもあるかもしれません。しかし、ミッションやビジョンを明確に言語化し、行動指針を定めれば、時間はかかるかもしれませんが、おのずと企業文化は醸成されていくものです。
清水 直樹
仕組み経営株式会社
代表取締役
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