3.マネーストック:市中通貨量は引き続き緩やかに増加、投信が15年ぶりの高い伸びに
7月11日に発表された6月分のマネーストック統計によると、金融部門から市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比2.58%(前月は2.64%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同2.06%(前月は2.12%)と、ともにわずかに低下した(図表10)。
今年に入ってからの伸び率は概ね横ばいの動きが続いている。
M3の内訳では、最大の項目である預金通貨(普通預金など・前月4.8%→当月4.7%)の伸び率がやや低下、現金通貨(前月1.4%→当月1.2%)、CD(譲渡性預金・前月▲11.2%→当月▲14.1%)の伸びもやや低下したが、準通貨(定期預金など・前月▲1.7%→当月▲1.4%)とのマイナス幅が縮小し、全体の伸び率を支える形となった(図表11・12)。
通貨量は実態として緩やかな増加基調が続いている。既述の通り、銀行貸出は高い伸びとなっており、その分(通貨量にカウントされる)預金が創造されているものの、貿易赤字が続いていることが、預金残高の伸び率抑制を通じて通貨量の伸び率抑制に働いているとみられる。
一方、広義流動性(M3に投信や外債といったリスク性資産等を加算した概念)の伸び率は前年比2.56%(前月は2.43%)とやや上昇した(図表10)。
内訳では、既述の通り、M3の伸びがわずかに低下したものの、規模の大きい金銭の信託(前月2.8%→当月3.0%)の伸びが持ち直したほか、投資信託(私募やREITなども含む元本ベース、前月6.9%→当月9.8%)の伸び率が大きく上昇したことが寄与した(図表12)。
投資信託は後々大幅に改定される傾向があることには留意が必要だが、6月の伸び率は2008年6月以来15年ぶりの高さにあたる。NISAなどでの積み立て投資の普及に加え、日本株の上昇期待や日銀の緩和継続観測などを受けて、投信への資金流入が進んだとみられる。
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